研究課題
本研究では、フラーレンやカーボンナノチューブ(以下、CNT)などの炭素系ナノ粒子のバイオ応用の可能性を検討する為に、まずナノカーボンの親水化処理を行い、その生体物質・細胞への影響を検討、また体内動態の可視化を試みた。これまで共有結合を介したCNT表面へのカルボキシル基の提示を行ってきたが、今年度は新たに分子間相互作用を用いた修飾法についても検討し、分散性を向上させたCNT誘導体の簡便な作成に成功した。CNTの表面性状の差異による生体分子との相互作用への影響について検討するため、親水化処理前後のCNT誘導体に対するタンパクの吸着挙動を検討した。表面電荷の異なる3種類(正・負に帯電、及び中性)のタンパクを、未修飾/カルボキシル化CNT分散液へと添加したところ、その吸着挙動に違いがみられた。CNTの生体内での分布をより簡便に可視化する手法として、顕微ラマン法を用いた臓器内に滞留しているCNTの直接観察、と、CNT誘導体表面への高輝度ユーロピウム錯体の化学修飾、を試みた。親水化CNTを投与したマウスの肺・肝臓を摘出し、その切片を顕微ラマン測定装置で観察することにより、CNT由来のラマン信号の検出に成功した。ユーロピウム錯体修飾CNTの作成にも成功したが、現在のところ、生体内での検出に十分な発光量は得られていない。また、カルボキシル化CNTを表面にアミノ基を提示したガラス基板へと結合させることにより、導電性透明基板の作成に成功している。この成果は、表面修飾CNT誘導体の新たな応用展開を可能にするものである。
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