研究課題/領域番号 |
24592948
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 正敏 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50400255)
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研究分担者 |
高田 雄京 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10206766)
依田 信裕 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20451601)
菊地 聖史 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50250791)
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キーワード | チタン合金 / インプラント / 抗菌性 / 生体適合性 / セルフクリーニング / チタン銀合金 / バイオフィルム |
研究概要 |
本研究課題では、歯科用チタン銀合金開発の一環として、(1)動物実験を行い、セルフクリーニング機能を有する歯科用インプラントを開発するとともに、(2)チタン銀合金におけるバイオフィルム形成抑制メカニズムを解析し、新たな機能性合金を開発するための基礎を構築することを目的とする。 平成25年度は、従来の研究成果を基にチタン銀合金の合金設計をし、合金の試作を行った。表面特性試験を行い、チタン銀合金とチタンの耐変色性について調べた。また、試作インプラントを作製し、実験動物(イヌ)の下顎骨への埋入試験を行った。 【合金の試作】金属元素を設計した合金組成となるように秤量し、アルゴンアーク溶解炉を用いて溶解して、ボタン状の合金インゴットを試作した。【変色試験】NaCl水溶液における変色試験を行った。浸漬前後の試料のL*a*b*値を色彩色差計で測定し、色差を算出して評価した。チタン銀合金の耐変色性は純チタンと同等であった。また、SCE方式の色差計を用いる際には、浸漬前に表面粗さによる色差を求める必要が有ることが分かった。【インプラントの製作】チタン、チタン銀合金インゴットを丸棒状に鋳造した。その鋳造体を旋盤加工と研削加工し、φ3.25 mm×8.0 mmのシリンダー型のインプラントを製作した。また、Ti-6Al-4V ELIの丸棒から、同形状のインプラントを製作した。【インプラント埋入試験】予め下顎前臼歯を左右3本ずつ抜歯し、3ヶ月の治癒期間を経た実験用動物(イヌ)に、試作インプラントを左右3本ずつ埋入した。埋入後は1ヶ月毎に単純X線撮影を行い、術後経過を観察した。埋入後1ヶ月と3ヶ月で屠殺し、埋入部周囲の顎骨を摘出し、X線CT撮影を行った。術部に炎症反応は認められず、マクロ像ではチタン銀合金はチタンと同様に骨と適合していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面特性試験のひとつである変色試験の実験過程で、色差計を用いた変色試験の評価方法について新たな知見があった。その評価方法を詳細に調べた成果は原著論文として受理された。 インプラント埋入試験は概ね予定どおりである。昨年はインプラント加工の難しさと、動物実験施設のイヌのケージの確保の遅れのため、予定より遅れたが、本年度行った手術に大きな失敗はなく、試作インプラントと骨との適合も予想どおり良好であった。摘出した術部サンプルの包埋は終わっているので、平成26年度のはじめに切片を製作し、その結果を論文発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に包埋まで終わったインプラント埋入試験のサンプルの組織観察を行う。また、各種表面特性試験を進める。 【インプラント埋入試験】レジンで包埋済みの試料をトリミングし、組織観察用の切片を切断装置で製作する。組織標本作製用試薬・器具を用いて組織学的観察を行い、生体内でのチタン合金の生体適合性について検討を行う。【変色試験】変色試験後の試料について、EPMAとXPSにより表面分析を行う。また、色差計を用いた変色試験の評価方法について、水での超音波洗浄の影響や、比較対照試料の保存環境の影響などを調べる。【バイオフィルム形成試験】細菌培養試験用品を用いて、試作合金をスクロース含有液体培地に浸漬し、バイオフィルム形成細菌を嫌気培養する。表面に形成されたバイオフィルムを回収して蒸留水に懸濁し、分光光度計で濁度を測定することで、バイオフィルム量を推定する。結果は純チタンおよび歯科用合金と比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進行度の多少の遅れにより、前年度の研究費の一部が次年度に持ち越しになった。 持ち越し分の研究費は、実験動物(イヌ)の購入費と飼育費に使われる予定である。
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