研究実績の概要 |
生体親和性に優れるチタン(cpTi)および生体内自己崩壊性合金として注目されているマグネシウム合金(AZ31, AZ91)表面に電解重合による無機有機ハイブリッド被膜の創製を検討した.無機材料としてナノメートルのハイドロキシアパタイト(Nano-Hap),有機材料としてはMMAを選択し次のように電解液を調製した.チオフィン系導電性モノマー2,3-ThiophenedicarboxaldehydeをMMAに溶解し,その濃度を0.01 Mとした.また,支持電解質としてMMAに溶解した0.1 M過塩素酸テトラブチルアンモニウムを用いた.両液体を混合して電解液とした.この電解液に約0.1 gのNano-Hapを添加した.合金をカソード,炭素棒をアノードとし,マグネットスターラーで撹拌(200 rpm)しながら電解処理をおこなった.また,電解時の電流値をデータロガーに記録した.カソード電極表面に生成したハイブリッド被膜をFTIR,EPMAとAFMを用いて分析した.その結果,電解電圧80 VDC,電解時間3600 sの電解条件では,両液体の混合体積比(導電性モノマー/支持電解質)が5/5, 7/3の場合,均一な被膜が生成された.これはカソードに用いた合金には依存しなかった.被膜は,FTIRスペクトルから導電性モノマーを含むPMMAと推測された.また,EPMAによる観察結果から生成した被膜内のNano-Hapの粒径は250 nm以下であった.ただ凝集状態の粒子も観察された.AFMによる平均表面粗さは,58 nmであった.以上の結果から,生体活性の無機ナノ粒子と有機薄膜とのハイブリッド被膜を合金表面上に生成することができた.マグネシウム合金の自己崩壊性の制御が可能な新しい表面処理を提案することができた.
|