研究課題/領域番号 |
24592955
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 哲 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30397773)
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研究分担者 |
寺岡 文雄 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00099805)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 有限要素法 / 粒子法 / 動的破壊解析 / 国際情報交換(米国) |
研究概要 |
歯根破折、歯と修復物の接着界面の剥離、インプラント周囲の骨吸収に見られる破壊現象の動解析をin silicoでシミュレーションし、新しい予防、あるいはlongevityを延ばすための方法論を確立するために、段階的に研究を遂行した結果、本年度は以下の成果が得られた。 1.う蝕歯のマイクロCTデータから、エナメル質、象牙質、歯髄領域を領域抽出ソフトを用いて抽出し、その結果を組み合わせることにより、複層構造からなるう蝕歯モデルを作製した。さらに、う蝕部を取り除いた複層構造からなる天然歯モデルの作製に成功した。 2.う蝕部をコンポジットレジンなどの修復材料により修復したことを想定した修復歯モデルの作製に成功した。 3.連結様式の異なる2種類(エクスターナル、インターナル)のインプラントモデル(アバットメント、アバットメントスクリュー、フィクスチャー)を作製し、これらのモデルと同形状のインプラントを用いた模型実験に成功した。 4.1~3で作製したモデルを皮質骨、海綿骨からなる顎骨モデルに各々埋入した動的破壊解析用モデルの作製に成功した。 5.メッシュ生成を全く必要としない「粒子法」を新たに破壊解析に応用することを発案し、歯質ミクロ構造を対象に、引張解析の結果を有限要素法と比較し、動的破壊解析における粒子法の有効性を検証した。その結果、今回新たに導入した粒子法が、動的破壊解析において有限要素法よりも有益であり、その拡張性も含めて、歯質硬組織のような複合構造をした組織の動的破壊解析に有用となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的では、平成24年度内に、1.歯や骨のX線マイクロCTあるいはCT画像からの領域抽出、2.1の結果をもとに複層構造からなる解析用の3次元CADモデルの作製を実施する予定であったが、1、2ともに既に達成しており、さらに、インプラントについては模型実験にも成功しており、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の遂行にあたり、以下の構成で効率的な研究推進を目指す。 1.当初の計画で研究分担者である寺岡文雄准教授が平成25年3月31日をもって定年退職となり、その役割を担う研究分担者の追加が必要となったため、解析用モデルの妥当性の検討や、破壊試験、疲労試験のデザインに同見識を持つ、佐々木淳一助教に平成25年4月1日より参画してもらう。 2.研究協力者として歯科医師である山西康文医員に加えて、同歯科医師である大学院生の森脇大善氏にも協力してもらい、解析用のCADモデルのデザイン、破壊試験や疲労試験の実施を担当してもらう。 3.研究代表者の海外研修先であったニューヨーク大学歯学部の歯科医師であるPaulo G. Coelho助教から、破壊試験や疲労試験に関する情報を提供してもらう。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の成果より、粒子法が有限要素法よりも動的破壊解析において有益であることが示唆されたため、これ以降の解析には粒子法を採用予定である。また、今年度実装を行った2次元粒子法の基盤となっているMPSアルゴリズムは非圧縮性流体の解析を目的に提案されたものであることから、次年度以降は、より弾性体解析に特化した粒子法ソフトウェア「SPHinx-SOLID」を購入し利用する。粒子法ソフトウェアの購入は当初予定していなかったが、本ソフトウェアは3次元STLモデルからの粒子生成が可能であることから、入力データの生成に使用する予定であったMeshman_Particlesを購入する必要がなくなった。また、「SPHinx-SOLID」の実行コードがFortranで記述されていることから、大阪大学サイバーメディアセンターのスーパーコンピュータSX9やPCクラスタを年間利用負担額10万円で利用でき、当初購入予定であった12コアのコンピュータを購入する必要がなくなった。
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