研究課題/領域番号 |
24592955
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 哲 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (30397773)
|
研究分担者 |
寺岡 文雄 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00099805)
佐々木 淳一 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50530490)
|
キーワード | バイオメカニクス / 有限要素法 / 粒子法 / 動的破壊解析 / 国際情報交換(米国) |
研究概要 |
歯根破折、歯と修復物の接着界面の剥離、インプラント周囲の骨吸収に見られる破壊現象の動解析をin silicoでシミュレーションし、新しい予防、あるいはlongevityを延ばすための方法論を確立するために、段階的に研究を遂行した結果、本年度は以下の成果が得られた。 1.エナメル小柱、エナメル小柱鞘とエナメル小柱間質からなる、エナメル質のミクロ構造CADモデルの作製に成功した。 2.シリカとジルコニアの配合割合を変化させたコンポジットレジンのナノ構造CADモデルの作製に成功した。 3.1と2で作製したCADモデルの3次元粒子生成に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では平成25年度に「有限要素法による破壊(破折、剥離、吸収)シミュレーションの実施と評価」を行う予定であったが、平成24年度の実施状況報告書に記述したとおり、粒子法が有限要素法よりも動的破壊解析において有益であることが分かった。そこで、平成25年度は、粒子法ソフトウェア「SPHinx-SOLID」を新たに導入し、平成24年度に作製に成功した天然歯モデル、修復歯モデルとインプラントモデルを用いて破壊シミュレーションの実施と評価を試みた。しかしながら、一度に生成できる粒子数に制限があり、これらのモデルを十分に表現できる粒子数で入力データを生成するのは困難であった。そこで、破壊メカニズムの解明に特に重要であると考えられるナノとミクロスケールに焦点を絞ることとした。天然歯モデルについてはミクロ構造のみ、修復歯モデルについては修復材料(コンポジットレジン:CR)のナノ構造のみに着目し、粒子化を行ったところ十分な解像度で入力データを生成できた。インプラントモデルについては、当初の計画通り、骨リモデリングソフトウェア「V-BoneRemodeling」を利用したが、一度の解析で同時に取り扱えるモデルの数に制限があり、インプラントモデル(アバットメント、アバットメントスクリュー、インプラント体)、皮質骨と海面骨からなる複数のモデルを用いた解析は困難であったことから、マルチスケール解析と組み合わせることでインプラント体と骨の界面のみにモデル数を減らして解析が可能かどうか検証を進める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の遂行にあたり、以下の構成で効率的な研究推進を目指す。 1.粒子法で破壊をシミュレーションするのに必要な最大主ひずみの閾値を検証するにあたり、ベンガジ大学歯学部から海外招へい研究員として受け入れているIdris M. Mehdawi助教にコンポジットレジンの破壊試験についての情報を提供してもらう。 2.V-BoneRemodelingの開発者である京都大学再生医科学研究所の安達泰治教授から技術的情報を提供してもらう。 3.研究代表者の海外研修先であったニューヨーク大学歯学部の歯科医師であるPaulo G. Coelho准教授から、破壊試験や疲労試験に関する情報を引き続き提供してもらう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では破壊シミュレーション用のソフトウェアとしてANSYS LS-DYNAの年間レンタルライセンス料に研究費を使用する予定であったが、平成24年度の実施状況報告書に記述したとおり、粒子法が有限要素法よりも動的破壊解析において有益であることが分かった。そこで、平成25年度は、粒子法ソフトウェア「SPHinx-SOLID」を新たに導入することとし、これに伴い使用計画を変更したため、次年度使用額が生じた。 平成26年度に実施予定の破壊試験や疲労試験の試料作製用のモールド製作費、材料費、疲労試験機用の治具製作費や試験機の利用料などの一部として使用することを予定している。
|