研究課題/領域番号 |
24592958
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
友竹 偉則 徳島大学, 大学病院, 講師 (70263853)
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研究分担者 |
内藤 禎人 徳島大学, 大学病院, 助教 (20509773)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯科材料学 |
研究概要 |
本研究では、温度応答性ポリマーを用いることによって、患者による取扱いが容易で口腔衛生の維持に寄与する義歯安定剤、軟質裏装材を開発することを目的としている。医薬品や食品加工剤として頻用されている温度応答性ポリマーであるポロキサマー(商品名Lutrol:BASF SE、ドイツ)を用い、分子量の異なる数種類のポリマーの組成比、粉液混和比等を調整して、その流動性や粘着性などの物性評価を行っている。 これまでに、Lutrol108の質量%30%,Lutrol127の質量%25%の蒸留水の混水率とした場合に17-18度で流動性、物性の変化を認めた.質量40%として混水率を減じた場合にはポリマーの溶解は困難であることが分かった。上記条件で、想定した使用状況に適する温度と考えられる一方で,物性として含有水分比率が高かったため、現在使用されている義歯安定剤よりも粘性は低いものであった。 そこで、温度応答性ポリマーのゲル化状態での義歯安定剤としての要件を評価することとし、模型実験を行った。義歯の維持の評価として、上顎無歯顎模型の両側犬歯相当部に2本埋入したインプラント‐オーバーデンチャーモデルを用い、インプラントアタッチメント部にクッションタイプおよびクリームタイプの義歯安定剤、上記条件のポリマーをアタッチメントとして使用した場合の義歯の維持力を測定した。また、義歯床下組織である顎堤粘膜および支持インプラントへの圧力分布を評価する目的で、下顎無歯顎模型の両側犬歯相当部に2本埋入したインプラント‐オーバーデンチャーモデルを用い、インプラントアタッチメント部に通常使用するボールアタッチメント、マグネットアタッチメント、義歯安定剤、上記条件のポリマーを使用した場合のインプラント周囲および臼歯部顎堤粘膜への圧力分布を測定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまずポリマー混和条件を検討することにあり、温度変化による流動性や粘着性などの物性評価を行ってきた。検索途上で、実際使用に適当な温度での物性変化は確認できたが、ポロキサマー単体では物性的に想定していた粘性が発揮されないことが推測できた。そこで、温度応答性ポリマーを担体として粘膜調整剤および義歯安定剤と混和することによって粘性、粘弾性を強化し、かつ温度応答性の物性変化を付与することとし、義歯安定剤としてのモデル実験を先行して行うこととした。これによって、現在使用されている各種の義歯安定剤ならびに粘膜調整材、軟質裏装材の性能を口腔内使用による維持力、応力分布を計測、比較することで、より実際条件に近い義歯安定剤の性状設定を検索している。
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今後の研究の推進方策 |
温度応答性ポリマーを担体とした義歯安定剤を評価するため、基本的物性の評価方法としてJIS規格(JIS T 6525-1:2005)に則って、各混和条件の評価を行う。具体的には、義歯と本材料のくっつきやすさを評価する粘着強さ、本材料を義歯から除去しやすさを評価する洗浄性、そして義歯内面での広がりを評価する流動性を評価する。また、JIS規格以外にも義歯安定剤の物性を評価する方法として、操作性や効果に影響する動的粘弾性の測定を行う。並行して、温度応答性ポリマー混和体のゾル・ゲル変化温度を確認する。口腔内での使用を考えているため、4℃~15℃でゾル化、30℃~40℃の範囲で完全にゲル化する条件を確認していく。ある程度の条件設定が確認できた段階で、引き続き模型実験において各条件で維持力、応力分布を測定し、義歯安定剤としての性状を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的物性の評価方法としてJIS規格(JIS T 6525-1:2005)に則って、各混和条件での物性評価を行うための規格試料を作製する材料・器具が必要となる。また、温度管理下での粘性測定のために動的粘弾性測定装置を購入済みであるが、設定条件を広げるための計測用スピンドルなどの附属品の追加購入も必要である。 模型実験においても各条件での規格試料を複製する必要があるため、材料・器具が必要となる。 次年度への繰越額は試料作製のための材料購入に使用する予定である。
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