研究実績の概要 |
歯周組織を再生させる能力がある組織幹細胞としてこれまで歯根膜幹細胞(Periodontal ligament stem cells: PDLSCs)や歯髄幹細胞(Dental pulp stem cells: DPSCs)が報告されている。これまで研究されているPDLSCsやDPSCsは、歯髄あるいは歯根膜組織を培養皿上で接着培養していく過程で、付着増殖した細胞をPDLSCsあるいはDPSCsと定義し、その幹細胞としての性質が調べられてきた経緯がある。しかし、これらの幹細胞が歯周組織のどこに存在し、炎症に罹患していない状態ではどのように恒常性を維持しているのかこれまでほとんど証明されていない。このような状況を背景にマウスおよびヒト歯周組織幹細胞を特異的細胞表面マーカーによって、フローサイトメトリーで直接分離し、歯周組織の恒常性維持に関与する、あるいは炎症によって破壊された組織を再生させる可能性を有する細胞を明らかにすることを研究計画の概要とした。 本研究計画の3年間に歯周組織を再生させている組織は局所の歯根膜細胞や歯槽骨細胞に存在する幹細胞のみならず、体幹から移動してきてた幹細胞が組織修復に寄与している可能性が示唆されると報告された(Kimura Y, Komaki M, Iwasaki K, Sata M, Izumi Y, Morita I. Recruitment of bone marrow-derived cells to periodontal tissue defects. Front Cell Dev Biol. 2014 May)。このことからわれわれがこれまで研究対象としてきた純化骨髄間葉系幹細胞が歯周組織再生に寄与する可能性が高いことが考えられたため、現在ヒトiPS細胞から、ヒト純化間葉系幹細胞を誘導し、歯周組織再生療法に有効であるかを検討している。
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