研究課題/領域番号 |
24592967
|
研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
玉置 幸道 朝日大学, 歯学部, 教授 (80197566)
|
研究分担者 |
堀田 康弘 昭和大学, 歯学部, 講師 (00245804)
柴田 陽 昭和大学, 歯学部, 助教 (30327936)
片岡 有 昭和大学, 歯学部, 助教 (90527300)
|
キーワード | ケイ酸カルシウム / 生体材料 / 硬組織補填材 / リン酸カルシウム / 歯科材料 |
研究概要 |
歯科用アルジネートの廃材から抽出したケイソウ土とチョークを基材とした炭酸カルシウムによる合成実験を完了し、同じく廃材としての歯科用石膏(硫酸カルシウム)とケイソウ土の合成によりケイ酸カルシウムを創製している。このケイ酸カルシウムは化学反応式通りのモル比でも第二ケイ酸カルシウム、第三ケイ酸カルシウムとの複数のピークが確認された。そこでこれら第二、第三の試薬が存在しなかったために、高純度科学に特注して購入し、その生成の度合いを評価した。結論から述べるとケイ酸カルシウムは多形であるため完全に同定するのは困難であるが、ケイ酸カルシウム、第二ケイ酸カルシウム、第三ケイ酸カルシウムの混合物としてX線回折からは合成が認められた。理論的には第二、第三ケイ酸カルシウムが粉末の水和反応に関与するものと期待されるため、現在は割合を変化させて条件を検索している。 その一方で、廃材の石膏と歯科用リン酸亜鉛セメントの正リン酸水溶液を用いたβTCP生成についての研究も進め、この系については約800℃以上の電気炉焼成で合成可能であることが判明した。ただし、熱分析を行うと一部に石膏の基材である硫酸カルシウムが残存している可能性があることも認められた。しかし石膏自体も骨形成増進に有用であるとの論文もあるため、特に焼成温度を上げるとか焼成時間を延ばすことにはこだわらず、今後は生体への適用を検討する。なお、合成が可能であるところまではすでにDental Materials Journalに原著論文として投稿済みである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルジネート印象材と歯科用石膏の廃材から合成したケイ酸カルシウムの歯科応用、ならびに廃材の歯科用石膏を正リン酸水溶液で練和して合成するリン酸三カルシウム(β-TCP)については合成まで極めて順調に進んでいるが、たとえばケイ酸カルシウムの場合には第二、第三との割合がまだ制御できていないのが難点である。この制御がどの程度影響するのかは今後の細胞レベルでの研究に委ねるのであるが、いまのところ硬化反応に関与があり操作性に難点が出る程度に考えている。またβ-TCPについては硫酸カルシウムの残渣が気になるところである。しかし、今年度中には生化学的な検索が完了する段階まで進んでいるので有用性については十分に評価できるものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
アルジネート廃材と歯科用石膏廃材から合成するケイ酸カルシウムは歯科では歯内療法学の領域での関与が深い。根管治療用の代替材料としての可能性と、歯髄を保護する覆髄材あるいは根管用シーラーとしての可能性についてまで言及していきたい。しかし、根管に用いる材料として、あるいは覆髄材として要求される物理・化学的な性質などによっては、材料を一工夫しなくてならない。現在のところ、最も懸念されるのが硬化にやや時間がかかることであるためセメント系材料や、すでに骨補填ペーストとして市販製品として実績もあるコンドロイチン系の液剤の利用も考えている。また、歯科用石膏廃材から合成するリン酸三カルシウム(β-TCP)は新たな人工骨造成材料としての可能性を生化学的に評価していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年4月より研究・教育の職場が東京から岐阜に異動になり、実験に遅滞が生じたこと、さらには研究分担者との対応が遅れたこともあり、予定していた支出が賄いきれなかったため次年度に繰り越しとした。 今年度は新たな職場で研究分担者を依頼したので、今年度は研究を進めるために見合った経費、あるいは旅費など必要な額を支出していく所存である。
|