研究課題/領域番号 |
24592970
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
佐藤 秀明 東京都市大学, 工学部, 准教授 (00196263)
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キーワード | 歯科理工学 / 歯冠修復物 / 純チタン / 研磨加工 / 軸付き砥石の開発 / ポリ尿素樹脂ボンド / 表面粗さ / 光沢面 |
研究概要 |
本研究は,金属アレルギ-の発生が極めて少ない歯科用純チタンを研磨するための,ポリ尿素樹脂ボンド軸付き砥石の開発を行った.純チタンは,歯冠修復材料としては大変優れているが,極めて加工が難しい材料である.このため,臨床においては,その使用が敬遠されがちとなっている.高性能な歯科技工用軸付き砥石の開発は,金属アレルギ-の治療に必要な純チタン製の歯冠修復物の,さらなる普及のための一助となり,臨床において大変有益である. チタンは生体に安全な金属材料であり,金属アレルギ-を惹起する抗原・抗体反応を起こしにくく,強度も十分に有し,密度も小さい.しかし,極めて機械加工が難しい難加工材料であるため,現在,歯冠修復材料として十分に普及していない.例えば,純チタン製の歯冠修復物の製作においては,煩雑な研磨工程が必要となっている.このため,歯科医師,歯科技工士から,工程の簡略化と研磨時間の短縮,表面粗さの減少等,研磨技術の向上が望まれている. そこで,本研究においては,臨床応用を目的とした歯科技工用軸付き砥石開発に関する新しい試みとして,ポリ尿素樹脂ボンド軸付きGC(SiC)砥石を開発し,純チタンの研磨特性について調べた.平成24年度は,結合剤の硬さが1種類(ショア硬さD58)であったが,平成25年度は,研磨性能の向上(表面粗さの減少,研削比の向上)を目的として,結合剤の硬さを新たに2種類(ショア硬さD68,D78)加えて,研磨実験を行った.多くの実験回数による結果ではないが,結合剤の硬さがD68,砥粒率が約48%の砥石の場合,研磨後の算術平均粗さRaが,0.2μmに近い値を示し,平成24年度の結合剤の硬さがD58,砥粒率が約48%の砥石とほぼ同じ結果を示した.その他の条件の砥石の場合は,Raが大きくなってしまい,研磨性能を向上させることができなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.平成24年度に,軸付き砥石専用の横軸型研磨装置を製作する目的で,新東科学株式会社より,摩擦摩耗試験機を購入した.平成25年度は,研磨装置の改良を行ったが,製作を依頼した部品の納期の遅れ,改良のための調整に時間がかかり,実験装置の改良が遅れてしまった. 2.純チタンは大変に研磨しにくい難削材であるため,研削比が極めて小さく,砥石の損耗量が大きい.このため,砥石の消耗が激しい.軸付き砥石は,共同研究先であるリ-ド創研に製作を依頼しているが,特注品ということもあり,製作に時間を要し,軸付き砥石 の納期が遅れてしまった. 3.純チタンの試験片の加工には,所属研究室が保有している平面研削盤を使用しているが,長年,平面研削盤を使用したために,テーブルの左右送り装置のラックが摩耗した.このため,テーブル左右送りハンドルにより,左右にテーブルを送る操作ができなくなり,テーブルを左右に動かす際には,手動によりテーブルの端を押して,動かした.このため,試験片を加工する際に,段取り時間が多くがかかってしまい,実験遂行に遅れが出てしまった. 4.研究室で製作した軸付き砥石のツル-イング装置に使用しているXYテーブルが,長年の使用により,ガイドが摩耗した.このため,同型の新しいXYテーブルに交換した.しかし,自作の装置のため,交換しただけでは,送りの精度が出ず,本軸付き砥石の振れを全て取ることができないことがわかった.このため,XYテーブルの取付け位置の調整を行い,ツル-イングができるようにした.この調整に時間を要したため,実験遂行に遅れが出てしまった.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,本研究においては,臨床応用を目的とした歯科技工用軸付き砥石開発に関する新しい試みとして,ポリ尿素樹脂ボンド軸付きGC(SiC)砥石を開発し,純チタンの研磨を行い,研磨特性について調べていく. 平成24年度は,砥粒率(vol%)を3種類に変化させて,研磨実験を行ったが,結合剤の硬さは1種類であった.平成25年度は,結合剤の硬さを2種類加えて研磨実験を行ったが,結合剤を硬くしても,研磨性能を向上させることはできなかった.実験の遅れもあり,多くの実験回数による結果ではないため,実験回数を重ね,実験結果の信頼性を高める必要がある. このため,平成26年度は,結合剤を3種類,砥粒率を3種類に変化させ,平成24,25年度で得られた結果の中で,実験回数の少ない箇所の補完を行うとともに,さらに,砥粒にダイヤモンドを使用した砥石も製作し,研磨実験を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく中で,リ-ド創研から軸付き砥石を調達できたため,研究費が節約できた.よって,次年度使用額15,733円が発生し,これを次年度の物品費に使用する. 物品費としては,純チタンの鋳造時に使用する埋没剤およびワックスパターンを製作するためのワックスの購入,実験装置を改良するための材料の購入,軸付き砥石の購入,試験片を製作するために必要なダイヤモンドホイールおよび耐水研磨紙の購入に使用する計画である.旅費としては,学会発表のための旅費に使用する計画である.
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