研究課題/領域番号 |
24592975
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
有田 憲司 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (20168016)
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研究分担者 |
篠永 ゆかり 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (70531961)
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キーワード | グラスアイオノマーセメント / ハイドロキシアパタイト / 機械的強度 / 高周波誘導結合プラズマ発光分析 |
研究概要 |
本研究は新規開発材料であるアパタイトグラスアイオノマーセメント(AGIC)の物理化学的特性を解明することによってAGICの高い生体活性機能を明らかにすることを目的としている。平成25年度は,研究実施計画に基づき下記の(1)~(4)の研究を行った。 (1)機械的強度の時系列的変化の検討:充填用化学重合型グラスアイオノマーセメント(GIC)(フジIXGP およびフジIXGP Extra,ジーシー)および小窩裂溝填塞用GIC(フジIII,ジーシー)のガラス粉末に各割合で球形ハイドロキシアパタイト(HAp,太平化学産業)を試作AGIC粉末を作製し,それぞれ基材のGIC液と所定の粉液比で練和しAGIC硬化体を作製した。練和開始から24時間後に3点曲げ試験および圧縮試験を行った。その結果,フジIXGP Extraを基材としたAGICではHAp12wt%添加群はGICよりも曲げ強度が有意に高く,圧縮試験ではGICとAGICとの間に有意差は認められなかった。 (2)電子顕微鏡による試料断面観察:断面試料を作製し走査型電子顕微鏡(JSM-6701F)にて反射電子像を観察した。AGIC試料中のGICガラス周囲の反応層がGIC中のガラスにみられる反応層よりも厚く,また,HAp微粒子がAGIC試料中に散乱して反応している像が見られた。 (3)試料硬化反応時のpH測定:GICおよびAGICの硬化反応時のpH測定方法を検討した。現在継続中である。 (4)各種溶出イオン定量:高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES)にてAl,Si,P,Ca,Srの溶出量を測定した。ポジティブコントロールとしてS-PRG配合コンポジットレジン(GIOMER)も測定した。AGICからのAl,PおよびSiの溶出はGICおよびGIOMERと比較して有意に高かった。 以上の結果より,AGICは従来型GICと比較して機械的強度は高く,さらに,Bioactive材料として知られるGIOMERよりも優れた元素溶出能が認められ,歯質の脱灰抑制および再石灰化促進,二次象牙質の形成促進,緩衝作用といった生体活性効果がもたらされると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度より大学院生が2名加わったことにより,研究協力体制が整ったことは大きな進展である。研究計画に基づき,経時的なAGICの機械的強度の測定は平成24年度から継続しており,順調に進行している。また,電子顕微鏡による試料断面の観察については,岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・共同利用施設の長岡紀幸博士の協力も得られ,HApのAGIC中における反応像を観察することに成功したことは大きな成果と言える。さらに,ICP分析により,各種イオンの溶出が対照群のGICのみならずイオン溶出による生体活性効果が特徴であるGIOMERよりも優れていることが明らかとなり,AGICの優れた生体活性効果が期待できる結果が得られた。平成25年度の研究計画に挙げていたAGIC硬化反応時のpH測定については平成25年度で測定方法が概ね確立したため,平成26年度において継続して研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策についてであるが,平成25年度より岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・共同利用施設の長岡紀幸博士の協力により,走査型電子顕微鏡によるAGICのスライス切片の観察を行っており,切片の作製方法や観察方法が平成25年度に概ね確立した。それに加えて,平成24年度私立歯科大学等研究設備整備等補助金の交付により購入・設置された高精度XPS(PHI X-tool,アルバックファイ社製)の使用講習も共同研究者および協力者全員が終了したため,その切片試料を用いたAGICの各構成要素のXPSによる元素マッピングが平成26年度より積極的に実施できることとなった。さらに,平成26年度は中国から2名の研究者を受け入れる予定であり,研究協力体制が強化される。これは非常に大きな方策である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度より継続しているICP分析を平成26年度も行う予定である。当初の予定では,その外注費にかかわる予算を組んでいなかったため,本年度の予算から次年度に外注費分を繰り越した。 平成26年度は上記の外注分析および成果発表(論文投稿,学会発表)に使用する。
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