研究課題
本研究は新規開発材料であるアパタイトアイオノマーセメント(AIC)の物理化学的特性を解明することによってAICの高い生体活性機能を明らかにすることを目的としている。平成26年度は研究計画に従い,平成24年度および25年度の研究を継続するとともにその成果をまとめ,学会発表および論文を作成した。高強度充填用従来型グラスアイオノマーセメント(GIC)であるFuji IX GP(GP)とその改良方であるFuji IX GP Extra(Ex)を基材として球形ハイドロキシアパタイト(HApS)を添加して作製したAIC(Ex-AIC)の機械的強度を測定した結果,ExはGPよりも機械的強度が劣るものの,Ex-AICはExよりも有意に機械的強度が向上し,高強度で知られるGPと同程度の機械的強度を得た。さらに,ExはGPよりも数倍もの高いフッ化物徐放能を有することを認めたが,Ex-AICはExよりもさらにフッ化物徐放能が有意に高いことを認めた。また,その他のイオン溶出能もEX-AICは機能的材料として高いイオン溶出能を誇るS-PRGフィラ―含有コンポジットレジンよりも有意に高かった。Ex-AICの薄切切片のSEM観察より,添加したHApはナノサイズの一次粒子が凝集して球形を呈しているが,添加したAICの表面に付着していたナノサイズの一次粒子がマトリックス中に拡散し,また,ガラスコア表層に分厚いゲル層が形成されている像が確認された。さらに,各組織における元素分析より,AICのマトリックス中にはガラスコアやHApS由来の元素が,ガラスコアにはHApS由来の元素が,さらにHApS内部にはガラスコア由来の元素が検出された。以上のことから,AIC中では,HApSの微粒子がマトリックス中に拡散することにより,マトリックスを充実させ,ガラスコアと一体化し,さらにHApSにもマトリックスが侵入してより一層マトリックスが物理的かつ化学的に強化され,様々な効果が得られると考えられた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)
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