研究課題/領域番号 |
24592981
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤原 夕子 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (50466744)
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研究分担者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
森 良之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70251296)
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キーワード | 軟骨再生医療 |
研究概要 |
軟骨組織は自己修復力に乏しく、また体内から採取できる組織量も限られているため、軟骨再生医療の発展が期待されている。本研究の目的は、再生軟骨移植の組織反応の中心を担うマクロファージに関して、炎症性/抗炎症性マクロファージ(M1/M2マクロファージ)の存在比率(ポラリゼーション)を詳細に検討し、再生軟骨移植における組織反応制御への一助とすることである。本年度は、マクロファージ・ポラリゼーションが再生軟骨移植に及ぼす効果の検証を行った。実験用マウスとして頻用されるC57BL/6J(M1傾向)およびBalb/c(M2傾向)それぞれの耳介軟骨から単離した軟骨細胞を増殖培養させ、ポリ乳酸(PLLA)多孔体へ播種して再生軟骨を作製した後、背部皮下へ同系移植した。sGAGの蓄積やトルイジンブルー染色におけるメタクロマジー領域などを指標に、移植後8週までの軟骨基質の蓄積を比較したところ、両者に有意な差は認められなかった。また、抗F4/80抗体や抗Arginase I抗体を用いた免疫組織化学染色によるマクロファージの局在検討においても、両者に明らかな差は認められなかった。次に、マクロファージ機能不全誘導薬を用いたマクロファージサブクラスの機能評価を行った。再生軟骨移植時にclodronate liposomeを腹腔投与し、移植直後のマクロファージを抑制したところ、移植後2週におけるsGAGの蓄積が有意に増加した。一方、再生軟骨移植時ではなく移植後2週でclodronate liposomeを投与した場合には、軟骨の基質産生はむしろ減少することが観察された。本年度の検討により、移植後早期に出現するM1傾向のマクロファージの局在を抑制することにより、再生軟骨移植における軟骨成熟を促進できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた1)マクロファージ・ポラリゼーションが再生軟骨移植に及ぼす効果の検証、2)マクロファージ機能不全誘導薬を用いたマクロファージサブクラスの機能評価に関して検討を行い、有意義な知見が得られた。順調に研究が進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの検討で、再生軟骨組織に認められるマクロファージにサブクラスがあること、マクロファージのサブクラスにより軟骨細胞の分化度に違いが出ること、移植後早期はM1傾向のマクロファージが優位であり、その局在を抑制することにより、軟骨成熟を促進できる可能性があることなどが示唆された。本年度は、マクロファージ機能不全薬の投与時期の違いにより誘導される組織成熟の違いについて、マウス再生軟骨同系移植モデルを用いて、更に詳細な検討をおこなっていく予定である。具体的には、マクロファージ機能不全を一時的に誘導するclodronate liposomeを腹腔投与する際、投与時期や期間を細かくきざみ、機能不全を誘導する時期を調整する。継時的に摘出した再生軟骨組織の組織学的、免疫組織化学的、生化学的解析を行い、各サブクラスのマクロファージが再生軟骨移植において及ぼす効果を検討する予定である。ついで、再生軟骨医療におけるマクロファージ・ポラリゼーション制御の応用を検討する。M2マクロファージへの変換を誘導する因子として報告されているIL-4などのリコンビナント蛋白を、再生軟骨の足場素材に混和、もしくは結合させ、ポラリゼーションの制御を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マクロファージ機能不全誘導薬のclodronate liposome を用いた検討において、投与経路などの初期検討が予定していた以上に順調に進み、実験動物数を削減することが可能であったため。 Clodronate liposomeの投与回数や投与期間について、更に詳細な解析を行い、再生軟骨移植におけるマクロファージのサブクラスに関する知見を蓄積する予定である。
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