研究課題/領域番号 |
24592986
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
相川 友直 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00362674)
|
研究分担者 |
木全 正彰 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (90448134)
宮川 和晃 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50635381)
|
キーワード | 歯原性腫瘍 / 歯原性嚢胞 / TGF-beta / RANKL / 破骨細胞 |
研究概要 |
顎骨病変による骨破壊、骨吸収機序を明らかにすることを目的とし、顎骨嚢胞・腫瘍性病変が産生するサイトカイン、特にTGF-betaに焦点を当て、病変間質繊維芽細胞での破骨細胞活誘導因子、RANKLの発現機序を検討した。顎骨腫瘍間質繊維芽細胞は破骨細胞誘導因子であるRANKLを発現し、間質繊維芽細胞を介する破骨細胞誘導、骨吸収、腫瘍浸潤が引き起こされることが示された。 顎骨腫瘍・嚢胞を構成する歯原性上皮はTGF-betaとIL-1alphaを産生し、それぞれのサイトカインは周囲の間質線維芽細胞のRANKL発現を誘導することが示された。IL-1alphaはCOX-2タンパク、PGE2合成を介してRANKL発現を促進し、TGF-betaはIL-1シグナルによるNF-kBシグナル活性化を促進効果する効果と、RANKL転写を促進する直接作用の二つの経路を有することが示された。 TGF-betaシグナルによるRANKL遺伝子発現誘導の分子メカニズムを検索するため、ヒトRANKL遺伝子転写開始点上流2.3kbプロモーター配列をクローニングし、ルシフェラーゼを連結したベクターを作成した。そして、様々な長さのプロモーターコンストラクトを作成した。このベクターを間質線維芽細胞に遺伝子導入しTGF-beta刺激によるルシフェラーゼ活性を測定しTGF-betaが間質線維芽細胞のRANKL転写を調節するか検討した。その結果、ヒト顎骨腫瘍由来間質繊維芽細胞は高いヒトRANKL遺伝子プロモーター活性を示した。そして、TGF-betaは -176bp のプロモーター配列のルシフェラーゼ活性を上昇させた。 つまり、TGF-betaは顎骨腫瘍の間質繊維芽細胞のRANKL遺伝子転写を促進し、破骨細胞誘導、骨破壊をきたす分子機序が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトRANKL遺伝子のプロモーター配列をクローニングし、その転写調節を検討することができ、計画通り実験準備が遂行された。その実験系を用いて、歯原性顎骨腫瘍病変で発現するTGF-betaが顎骨腫瘍の間質繊維芽細胞のRANKL遺伝子転写を促進させることが示された。 研究計画は順調に進展していると思われる
|
今後の研究の推進方策 |
1)TGF-betaシグナルによるRANKL遺伝子発現誘導の分子メカニズムを検索する。ヒトRANKL遺伝子プロモーター配列の欠失・変異を作成し、TGF-beta刺激によるルシフェラーゼ活性を測定しTGF-betaが間質線維芽細胞のRANKL転写を調節部位を検討する。 2)転写調節部位に作用するシグナル分子、転写因子を解析し、その転写複合体とTGF-betaシグナルの関与を証明する 3)骨芽細胞と間質繊維芽細胞でのRANKL転写調節の違いを、上記のRANKLプロモーター配列を用いて検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度で512,620円の研究費が執行されなかった。研究の達成度は順調に進んでおり、遺伝子発現調節機構の検討に際して、プロモーター領域の遺伝子単離とベクターの作成が順調になされたこと、発現調節の検討も予想以上に順調になされたことにより、研究試薬等の購入が最低限でなされてことに起因すると思われる。 平成26年度は、前年度の未執行予算を合わせて、成果達成に必要な実験消耗品の購入(細胞の購入、抗体などの試薬購入)と研究成果報告(2014年7月と10月、2015年1月に開催される国内学会、および、学術論文等の作成準備と投稿費に使用する予定である。
|