研究課題/領域番号 |
24592989
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
永井 宏和 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (50282190)
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研究分担者 |
宮本 洋二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20200214)
内田 大亮 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20335798)
玉谷 哲也 徳島大学, 大学病院, 講師 (30274236)
大江 剛 徳島大学, 大学病院, 助教 (60432762)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯の再生 / iPS細胞 |
研究概要 |
平成24年度は,歯の再生医療の細胞ソースとして用いるiPS細胞の培養系を確立し,その特性について検討した.また,申請者らが開発した低結晶性炭酸アパタイトの顆粒をラット背部皮下に埋植して,生体内での反応について検討した. ①iPS細胞の培養系の確立:理化学研究所から購入したヒトiPS細胞(HPS0002)を実験に用いた.マイトマイシンC処理したマウス胎仔線維芽細胞をフィーダー細胞として用いて,iPS細胞を培養して継代した後,凍結保存を行った.さらに,維持培養,凍結,解凍を繰り返し行ったiPS細胞について,免疫染色(Nanog,E-cadherin,SSEA-3,SSEA-4,TRA-1-60,TRA-1-81)とアルカリフォスファターゼ染色を行って多能性を維持していることを確認した.なお,ヒトiPS細胞は増殖が遅く,十分な細胞ストックが作成できていない. ②低結晶性炭酸アパタイトの生体内での反応:炭酸アパタイト顆粒(粒径:300~600μm)にBMP-2溶液を滴下含浸させて複合化(BMP-2量:0,5,50μg)し,ラット背部皮下に埋植した.埋植2,4,8週後に試料を摘出して脱灰切片を作製し,HE染色による組織学的評価を行った.ラット背部皮下での異所性の硬組織形成は,BMP 0μgおよび5μgと複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットではみられなかったが,BMP 50μgと複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットでは,アパタイト顆粒を取り囲むように硬組織の形成がみられた.硬組織の形成は4週までに行われ,8週ではほぼ終了していた.OsterixとRunx2の免疫染色の結果では,埋植後2~4週で炭酸アパタイト顆粒の周囲に多数の発現細胞を認めたが,8週では発現細胞は減少した.また,炭酸アパタイトの顆粒径は経時的に小さくなり,生体内で吸収されることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では,申請者らが樹立した不死化歯原性細胞との相互作用によって,エナメル芽細胞や象牙芽細胞などの歯原性細胞へ分化させたiPS細胞を歯の再生医療の細胞ソースとして用いる.さらに,申請者らが開発した生体吸収性の低結晶性炭酸アパタイトを応用して新しい歯の再生用スキャホールドを開発する. 平成24年度の当初の計画では,(1) 不死化歯原性細胞株との共培養によるiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導,(2) 基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子など歯の分化に関わる因子によるiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を行い,さらに(3)歯原性細胞へ分化誘導させた細胞をヌードマウスの皮下あるいは腎被膜下に移植し,生体内での分化を検討する予定であった. まず,歯の再生医療の細胞ソースとして用いるヒトiPS細胞の培養系を確立し,その特性を検討した.免疫染色とアルカリフォスファターゼ染色の結果では,維持培養,凍結,解凍を繰り返し行ったヒトiPS細胞が多能性を維持していることを確認した.本研究を行うためには,均質で十分なヒトiPS細胞のストックが必要であるが,ヒトiPS細胞の増殖が思ったより遅く,十分な細胞ストックが作成できておらず,分化誘導実験は遅れている. そこで,平成26年度に計画していた新しい歯再生用のスキャホールドとして用いる低結晶性炭酸アパタイトの生体内での反応について検討を行った.ラット背部皮下に埋植した炭酸アパタイト顆粒は,経時的に粒径が小さくなり,生体内で吸収されることが明らかとなった.さらに,BMP-2(50μg)と複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットでは,アパタイト顆粒を取り囲むように硬組織の形成がみられたことから,炭酸アパタイトの歯再生用スキャホールドとしての可能性が示された.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,申請者らが樹立した不死化歯原性細胞(エナメル芽細胞,象牙芽細胞)との共培養や歯の分化に関わる基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子によって,ヒトiPS細胞を歯原性細胞(エナメル芽細胞や象牙芽細胞)へ分化させて歯の再生医療に用いようと考えている.本研究を行うためには,均質で十分なiPS細胞のストックが必要であることから,平成24年度はヒトiPS細胞の特性を調べるとともに,その細胞ストック作製に時間を費やした.しかしながら,ヒトiPS細胞の増殖が思ったより遅く,十分な細胞ストックができていない.今後も,ヒトiPS細胞のストック作製を続けるが,細胞の増殖能を考えて,マウスiPS細胞を用いた実験も平行して行う予定である.均質で十分なiPS細胞のストックができたら,ヒトあるいはマウスのiPS細胞を効率よく歯原性細胞へ分化誘導させる条件の検討を行う.分化誘導には,①申請者らが樹立した不死化歯原性細胞(エナメル芽細胞,象牙芽細胞)との共培養,②歯の分化に関わる基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子,③歯原性上皮細胞の分化に必須の転写因子であるEpiprofinなどを応用する. 一方,申請者らが開発した生体吸収性の低結晶性炭酸アパタイトを応用した新しい歯の再生用スキャホールドの開発については,その可能性が示された.今後は,①炭酸アパタイト上でiPS細胞や申請者らが樹立した不死化歯原性細胞を培養して,その接着,増殖,分化を検討する.さらに,iPS細胞の歯原性細胞への分化誘導実験が上手くいけば,その歯原性細胞を用いて同様の実験を行う.②歯の分化に関わる基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子の炭酸アパタイトの吸着について検討し,これらの因子を徐放できるようなシステムを開発する.③炭酸アパタイトの形態をコントロールする.これらによって,歯の再生医療を開発する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,まず,均質で十分なヒトiPS細胞のストックを作る.同時に,マウスiPS細胞でも培養系を確立し,その特性を検討して,均質で十分な細胞ストックを作る.細胞ストックができたら,当初,平成24年度に計画していた不死化歯原性細胞株との共培養や,歯の分化に関わる基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子によるiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を行う.さらに,平成25年度の計画である歯原性上皮細胞の分化に必須の転写因子であるEpiprofinによるiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を行う.これらの分化誘導実験から,iPS細胞を効率よく歯原性細胞へ分化誘導できる条件を検討する.次年度への繰越額は,マウスiPS細胞のストック作製とその特性の検証,歯原性細胞への分化誘導に使用する予定である. 歯原性細胞への分化誘導が上手くいかない場合には,iPS細胞を一度間葉系幹細胞へ分化させ,そのiPS細胞由来間葉系幹細胞を歯原性細胞へ分化誘導させることを検討する.そして,分化誘導実験でiPS細胞から歯原性細胞へ分化誘導させた細胞をヌードマウスの皮下あるいは腎被膜下に移植し,生体内での分化を検討する. 一方,炭酸アパタイトを応用した新しい歯の再生用スキャホールドの開発については,炭酸アパタイト上で培養した不死化歯原性細胞の接着,増殖,分化を検討する.さらに歯の分化に関わる基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子の炭酸アパタイトの吸着能について検討し,これらの因子を徐放できるようなシステムを開発する.また,歯の形態を付与した炭酸アパタイトを作り,その表面で歯原性細胞を培養して,ヌードマウスの皮下あるいは腎被膜下に移植し,生体内での分化を検討する.
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