研究課題/領域番号 |
24592989
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
永井 宏和 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (50282190)
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研究分担者 |
宮本 洋二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20200214)
内田 大亮 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20335798)
玉谷 哲也 徳島大学, 大学病院, 講師 (30274236)
大江 剛 徳島大学, 大学病院, 助教 (60432762)
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キーワード | 歯の再生 / iPS細胞 |
研究概要 |
平成25年度は,歯の再生医療の細胞ソースとして用いるiPS細胞のフィーダーレス培養法を確立するとともに,細胞ストックを作成した.また,低結晶性炭酸アパタイト顆粒をラット背部皮下に埋植して,長期間の生体内での反応について検討した. iPS細胞の細胞ストック作製とフィーダーレス培養法の確立:理化学研究所から購入したヒトiPS細胞(HPS0002)を実験に用いた.まず,iPS細胞をマウス胎仔線維芽細胞(MEF)をフィーダーとして培養を行い,十分な細胞ストックを作成した.また,フィーダーレス培養法の確立を行った.フィーダーレス培養法で継代培養,凍結保存を行ったiPS細胞について,免疫染色とアルカリフォスファターゼ染色を行って多能性を維持していることを確認した. 低結晶性炭酸アパタイトの生体内での反応:ラット背部皮下に埋植した炭酸アパタイト顆粒の生体内での反応を長期間で評価した. BMP-2と複合化させた炭酸アパタイト顆粒をラット背部皮下に埋植し,2,4,8,12,28週後に試料を摘出した.HE染色による組織学的評価では,異所性の硬組織形成がBMP 50マイクログラムと複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットでアパタイト顆粒を取り囲むようにみられた.OsterixとRunx2の免疫染色の結果では,埋植後2~4週で炭酸アパタイト顆粒の周囲に多数の発現細胞を認めた.Osterix発現細胞は,28週まで顆粒周囲や新生骨周囲に存在したが,Runx2発現細胞は,8週以降は減少したことから,異所性の骨形成は4~8週までに活発に行われていると考えられた.また,摘出物のマイクロCTから炭酸アパタイトの顆粒径を測定したところ,顆粒径は経時的に小さくなった.さらに,脱灰切片のTRAP染色では顆粒周囲に陽性細胞が多数みられたことから,生体内で吸収されたことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
まず,歯の再生医療の細胞ソースとして用いるヒトiPS細胞の培養系(フィーダー細胞を用いた培養とフィーダーレス培養)を確立し,その特性を検討した.免疫染色とアルカリフォスファターゼ染色の結果では,維持培養,凍結,解凍を繰り返し行ったiPS細胞が多能性を維持していることを確認した.本研究を行うためには,均質で十分なヒトiPS細胞のストックが必要であるが,ヒトiPS細胞の増殖が遅く,細胞ストックの作成に時間を費やした. 続いて,基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子など歯の分化に関わる因子によるヒトiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を行った.すなわち,ヒトiPS細胞を,マトリゲル,ラミニン,IV型コラーゲンで表面処理した培養皿上で培養した.また,エナメル蛋白(エムドゲイン)で表面処理した培養皿上でも培養した.現在,これらのヒトiPS細胞のエナメル芽細胞および象牙芽細胞への分化を検討している. 一方,歯再生用のスキャホールドとして用いる低結晶性炭酸アパタイトの生体内での反応について検討では,ラット背部皮下に埋植した炭酸アパタイト顆粒の長期間での反応を検討した.顆粒径は経時的に小さくなり,長い期間をかけて生体内で吸収されることが明らかとなった.また,BMP-2(50マイクログラム)と複合化した炭酸アパタイトを埋植したラットでは,アパタイト顆粒を取り囲むように硬組織の形成がみられた.この硬組織形成は埋植後4~8週で活発に行われていたことから,移植後比較的早い段階で細胞の分化が起こっていることが明らかとなった.しかしながら,個体差が大きかったことから,その制御が歯再生用スキャホールドとしては問題になると考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,申請者らが樹立した不死化歯原性細胞との共培養や歯の分化に関わる基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子によって,ヒトiPS細胞を歯原性細胞(エナメル芽細胞や象牙芽細胞)へ分化させて歯の再生医療に用いようと考えた.本研究を行うためには,均質で十分なヒトiPS細胞のストックが必要である.平成24~25年度はヒトiPS細胞の特性を調べるとともに,iPS細胞のフィーダーレス培養法を確立し,細胞ストックの作製を行った.今後はiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導を進めていく.現在,iPS細胞を,マトリゲル,ラミニン,IV型コラーゲン,あるいは,エナメル蛋白(エムドゲイン)で表面処理した培養皿上で培養し,iPS細胞の歯原性細胞(エナメル芽細胞および象牙芽細胞)への分化を検討している.さらに,申請者らが樹立した不死化歯原性細胞(エナメル芽細胞,象牙芽細胞)との共培養や,歯原性上皮細胞の分化に必須の転写因子であるEpiprofinなどを応用していく予定である. 一方,申請者らが開発した生体吸収性の低結晶性炭酸アパタイトを応用した新しい歯の再生用スキャホールドの開発については,これまでの検討によってその可能性が示された.今後は,炭酸アパタイト上でiPS細胞や申請者らが樹立した不死化歯原性細胞を培養して,その接着,増殖,分化を検討する.さらに,iPS細胞の歯原性細胞への分化誘導実験が上手くいけば,その歯原性細胞を用いて同様の実験を行う.歯の分化に関わる基底膜成分,エナメル蛋白,分化増殖因子の炭酸アパタイトの吸着について検討し,これらの因子を徐放できるようなシステムを開発する.炭酸アパタイトの形態をコントロールする.これらによって,歯の再生医療を開発する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度では,当初26年度に計画していた低結晶性炭酸アパタイトを応用した新しい歯の再生用スキャホールドの開発については順調に実験が進んでおり,その可能性を示すことができた.一方,ヒトiPS細胞を用いた歯の再生医療の細胞ソースとして用いるヒトiPS細胞ついては,均質で十分な細胞ストックの作成に時間を費やしたため,その後の歯原性細胞(エナメル芽細胞および象牙芽細胞)への分化誘導実験が遅れている. 26年度は,iPS細胞の歯原性細胞への分化誘導実験では,iPS細胞を,マトリゲル,ラミニン,IV型コラーゲン,あるいは,エナメル蛋白(エムドゲイン)で表面処理した培養皿上で培養し,iPS細胞のエナメル芽細胞および象牙芽細胞への分化を検討する.さらに,申請者らが樹立した不死化歯原性細胞(エナメル芽細胞,象牙芽細胞)との共培養や,歯原性上皮細胞の分化に必須の転写因子であるEpiprofinなどを応用して歯原性細胞への分化誘導実験を進めていく予定である.一方,低結晶性炭酸アパタイトを応用した新しい歯の再生用スキャホールドの開発については,iPS細胞を炭酸アパタイト状で培養し,その応答を検討していく予定である.可能であれば,移植実験まで進める予定である.
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