研究課題/領域番号 |
24592991
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森田 浩光 九州大学, 大学病院, 助教 (30380463)
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研究分担者 |
光安 岳志 九州大学, 大学病院, 助教 (00380519)
安部 喜八郎 九州大学, 大学病院, 准教授 (20117055)
中村 誠司 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60189040)
伊東 祐之 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (80037506)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エナメル上皮腫 / 骨溶解 / V-ATPase / ClC-7 / RANKL |
研究概要 |
本研究の目的は、エナメル上皮腫細胞による新しい直接骨吸収とその機構の解明と現在まで広く行われてきた外科的治療の補助もしくはそれに代わる新たな内科的治療法の開発である。研究計画として、1) AM-1の骨無基質溶解(骨吸収)のメカニズムの解明と選択的阻害薬の検索、2)他のエナメル上皮種の亜型や他の腫瘍細胞(悪性も含む)での骨溶解・浸潤におけるV-ATPaseおよびCLC-7の関与の検討、という二大テーマを掲げ、本年度は主に1)に重点を置き実験を遂行した。 詳細としては、bafilomycinやconcanamycinといったV-ATPase阻害薬によりエナメル上皮腫細胞であるAM-1による骨溶解が抑制されるものの、etidronateやalendronateといった破骨細胞の活性を抑制するbisphoshonatesの投与では、骨溶解は阻害されなかった。一方でAM-1は、自らの細胞膜上に存在するV-ATPaseやCLC-7によって放出されるH+やCl-により骨溶解を引き起こすだけでなく、骨有機質を溶解させるcathepsin Kをも有していることがウエスタンブロットにて明らかとなった。またAM-1は、破骨細胞の分化を促進する物質であるRANKLを放出し周囲の破骨細胞をだけでなく、自らもRANKL受容体であるRANKを有していることが明らかとなった。さらにAM-1は、自らが溶解した骨基質からの細胞外Caにより形態が変化し、破骨細胞様に融合・多核化・巨大化し、がん細胞の転移時に観察される上皮間葉転換の指標となる間葉系マーカーが発現するだけでなく、破骨細胞分化のマーカーやマクロファージのマーカーをも発現していることが明らかとなった。以上の結果から、AM-1は上皮間葉転換だけでなく、一部マクロファージ様に転換し、形態変化及び骨溶解を引き起こしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果としては、エナメル上皮腫細胞であるAM-1が、当初考えていたV-ATPaseとClC-7の細胞膜上の発現による骨溶解機構のみに焦点を当てていたが、実は悪性腫瘍細胞と同様の上皮間葉転換や、さらには一部マクロファージ転換を引き起こしていることが明らかとなったことである。この結果は予想以上の成果であり、今後の展開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、培養細胞の実験を中心に遂行してきた。H25年度以降は、H24年度の細胞の実験をさらに奥深く、すなわち細胞内シグナル伝達系の解明を含め、明らかにしていく所存である。特にAM-1におけるRANKの役割を探る。一方で、患者様から提供していただいた摘出組織の免疫染色実験も同時に遂行していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験をスムーズに遂行するため、主に各種試薬および器具類などの消耗品の購入、共焦点顕微鏡などの機器借用料に充てる。さらにこれまでの成果を発表する目的で、国内外の学会に積極的に出席し発表することや論文を投稿するため、一部を旅費や投稿料に充てる予定である。
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