研究課題/領域番号 |
24592991
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
森田 浩光 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (30380463)
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研究分担者 |
光安 岳志 九州大学, 大学病院, 助教 (00380519)
安部 喜八郎 九州大学, 大学病院, 准教授 (20117055) [辞退]
中村 誠司 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60189040)
伊東 祐之 久留米大学, 医学部, 教授 (80037506)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ameloblastoma / V-ATPase / CLC-7 / demineralization / RANKL |
研究実績の概要 |
本研究ではエナメル上皮腫による新しい骨吸収機構の解明を目的とした。 エナメル上皮腫は本邦における良性歯原性腫瘍の中で最も頻度の高い疾患であり、顎骨内で悪性腫瘍細胞と同様にRANKLを発現し、破骨細胞を活性化させることにより骨吸収を行い増大していくと考えられていた。しかし本研究の結果、エナメル上皮腫細胞株(AM-1)におけるRANKL蛋白質の発現量は高転移性の舌癌由来口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-3)に比べて極めて少ないことが、ウエスタンブロッティング法にて確認された。マウスマクロファージ細胞株(RAW 264.7)とAM-1およびHSC-3との共培養実験において、TRAP陽性多核細胞の計測により破骨細胞形性能を調べるとHSC-3との共培養では多くのTRAP陽性多核細胞を認めたのに対し、AM-1との共培養ではTRAP陽性多核細胞は殆ど認められなかった。このことは、低いRANKL産生によるものと考えられた。そこで、エナメル上皮腫による直接的な骨吸収の可能性を検討した。AM-1をリン酸カルシウムのコーティングされたプレート上で培養すると多くの吸収窩が形成された。この吸収窩は、vacuolar-type H+-ATPase (V-ATPase)の阻害剤添加により抑制された。さらに、AM-1の細胞膜上へのV-ATPase とH+/Cl- exchange transporter 7 (CLC-7) の発現が膜蛋白質のビオチン化標識実験及び免疫蛍光染色にて認められた。エナメル上皮腫の病理組織切片を免疫蛍光染色法にて観察すると培養細胞での所見と同様にV-ATPaseとCLC-7の細胞膜への局在が、叢状型、濾胞型、基底細胞型の組織切片において観察された。しかし、AM-1の骨基質溶解活性は破骨細胞に比して60分の1程度であり、細胞増殖率も皮膚正常細胞株のHaCaTおよびHSC-3に比して5分の1程度であった。以上の結果よりエナメル上皮腫の顎骨内での緩やかな進展は、緩徐な細胞増殖と骨基質溶解によりもたらされることが示唆された。 以上の研究結果を国際雑誌で報告した。
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