研究課題/領域番号 |
24592994
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉住 潤子 九州大学, 大学病院, 研究員 (40596376)
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研究分担者 |
城戸 瑞穂 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (60253457)
大山 順子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70294957)
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キーワード | TRPV1 / Burning Mouth Syndrome / SNP |
研究概要 |
近年、口腔粘膜に器質的な変化が認められないにもかかわらず持続的な痛みを訴える Burning mouth 症候群(BMS)患者が増加している。本疾患の病態の把握は患者の自覚症状によるところが大きく、病因や病気の進展の機構の理解は進んでいないため、確立した治療方法がなく、診断および治療に苦慮している。患者は「ひりひり」・「ぴりぴり」と表現される疼痛を訴え、さらに辛味や熱さで痛みが誘発されるという特徴がある。その痛みの訴えが唐辛子を食した際の感覚に類似していることから、我々はこの症候と唐辛子辛味成分カプサイシンの受容体 TRPV1 (Transient Receptor Potential channel-Vanilloid subfamily member 1} との関連に着目した。 健常群およびBMS患者群を対象にTRPV1 の制御タンパクの結合部位およびカプサイシン結合部位におけるアミノ酸置換を伴う SNP (Single Nucleotide Polymorphism ) の頻度を解析した。本研究の趣旨に同意の得られた健常人 461 人および BMS 患者 91 人(すべて日本人)を対象として遺伝子多型解析を行った。カプサイシン感受性との関連が示唆されるSNPにおいて、BMS 患者群では健常人と比べ有意に遺伝子多型頻度が異なっていることがわかった。 さらに健常人におけるカプサイシン官能試験および電気味覚試験をおこなったところ、遺伝子多型間でカプサイシン感受性および電気味覚閾値に有意な違いが見られた。本結果より TRPV1 が口腔におけるカプサイシン感受性を制御する機能的なチャネルとして働いていることが明らかになると共に、BMS の病因遺伝子の一つであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初の計画にそって順調に進展した。健常群、患者群よりDNAサンプルを採取し、遺伝子多型解析ではTRPV1の侵害刺激受容に関与が示唆されている2つのSNP解析を行ない、カプサイシン感受性に関連すると思われるSNPを同定することができた。また健常群では2つの官能試験を行い、遺伝子多型と口腔感覚受容の関連を示唆する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
健常日本人およびBMS 患者のTRPV1 SNP解析の精度をより高めるために、今後患者サンプルの採取を増やして解析する予定である。官能試験に関しては、健常群のみ行っているため、今後患者群での試験を行う予定である。 TRPV1はすでに拮抗薬の開発が進んでいることから、遺伝子多型と口腔の痛み受容の関連を調べる事が、今後の新たな鎮痛薬の応用の可能性を探ることに繋がると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に多くの解析を行う必要が生じたため、消耗品や人件費を計上する。また研究をまとめるにあたり、他施設共同研究を行うための経費を計上する real time PCRに必要な消耗品の購入 謝金および旅費を計上する
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