研究課題/領域番号 |
24592998
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
東條 格 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70405439)
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研究分担者 |
藤田 茂之 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50228996)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 顎関節内障 / テネイシンC / テネイシンCノックアウトマウス |
研究概要 |
重症の顎関節症で生じる、顎関節の線維性癒着にテネイシンCがどのように関与しているかを、マウス顎関節を用いて検討した。 野生型(WT)マウスに過開口運動を加え、顎関節線維性癒着モデルを作製し、過開口運動後のWTマウスとテネイシンCノックアウト(TNCKO)マウスの顎関節癒着範囲をHE標本にて比較した。さらに、線維化に関係するテネイシンCと細胞接着に関係するフィブロネクチンの発現を免疫組織化学染色とマウス関節円板のウエスタンブロッティングにて検討した。 過開口運動後7日目にWTマウスにおいて関節円板の線維性癒着を認めたが、TNCKOマウスでは、癒着の開始時期が少し遅れ、過開口運動後12日目に線維性癒着を認めた。その後、WTマウスでは癒着部位の拡大が認められたが、TNCKOマウスでは癒着部位はWTマウスに比べ拡大は認められなかった。免疫組織化学染色では、過開口運動により、関節円板、関節窩においてテネイシンCの発現が強くなった。フィブロネクチンは、TNCKOマウス、WTマウス両方の顎関節において発現が認められ、TNCKOマウスではWTマウスよりフィブロネクチンの発現量は少なかった。 テネイシンCは、形態形成、発癌や創傷治癒などの組織再構築過程において重要な役割を果たす細胞外マトリックスと考えられている。過開口運動によりTNCKOマウスでは顎関節の線維性癒着の拡大を認めなかったことから、テネイシンCの欠質が原因と考えられた。過開口運動というメカニカルストレスによりテネイシンCは、関節円板、関節窩において発現した。しかし、関節円板の線維性癒着部位にはテネイシンCは発現しなかった。また、TNCKOマウスではフィブロネクチンの発現量は少なかった。以上のことから、テネイシンCは、フィブロネクチンの発現をコントロールし顎関節の線維性癒着に関係していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス顎関節炎モデルの作製はほぼ終了している。マウス顎関節炎モデルの免疫組織化学染色による検討は、フィブロネクチンにおいては、検討されているものの、他の因子にてはまだなされていない。予定していた下顎頭軟骨の厚みの変化については検討しているものの、WTとTNCKOとの差はみいだせていない。しかし、フィブロネクチンの発現については、ウェスタンブロットまで検討されており、WTとTNCKOとの差はみいだせている。これらの理由からおおむね研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①マウス顎関節炎モデルの標本において免疫組織化学染色を続行:WTマウスとTNCKOマウスの滑膜においてTNF-α、IL-6、およびIL-8の発現に差があるかどうかを免疫組織化学染色にて検索し、TNCが滑膜炎を増強する因子かどうかを検討する。WTマウスとTNCKOマウスの関節円板、下顎頭軟骨において免疫組織化学染色にてMMPの発現について比較検討し、TNCが関節円板と下顎頭軟骨の退行性変化に関与する因子かどうかを検討する。関節円板癒着の時期においては、免疫組織化学染色にてTGF-βとα-smooth muscle actin の発現を検索する。 ②マウス滑膜細胞とマウス関節円板細胞の初代培養:WTマウスとTNCKOマウスからマイクロ顕微鏡を用いて滑膜組織と関節円板組織を摘出する。滑膜組織は、out growth法で培養し、マウス滑膜細胞の初代培養を行う。また、関節円板組織はコラゲナーゼAで処置したのち、マウス関節円板細胞の初代培養を行う。 ③IL-1β添加および低酸素状態でのマウス滑膜細胞とマウス関節円板細胞のmRNAの発現: TNF-α、IL-6、IL-8、MMP、TGF-βおよび、α-smooth muscle actinのプライマーを用いて Real Time PCRを行い、顎関節炎の状態下でのmRNAの発現を検討する。 ④マウス関節円板細胞とマウス滑膜細胞におけるTNF-α、IL-6、IL-8、MMP、TGF-βおよび、α-smooth muscle actin のタンパク発現の解析。IL-1β添加および低酸素状態でのマウス滑膜細胞とマウス関節円板細胞からのタンパク抽出 。 ⑤ウエスタンブロッティングによるTNF-α、IL-6、IL-8、MMP、TGF-βおよび、α-smooth muscle actin のタンパク発現の解析
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次年度の研究費の使用計画 |
①マウス顎関節炎モデルの標本において免疫組織化学染色を続行:WTマウスとTNCKOマウスの滑膜においてTNF-α、IL-6、およびIL-8の発現に差があるかどうかを免疫組織化学染色にて検索し、TNCが滑膜炎を増強する因子かどうかを検討する。WTマウスとTNCKOマウスの関節円板、下顎頭軟骨において免疫組織化学染色にてMMPの発現について比較検討し、TNCが関節円板と下顎頭軟骨の退行性変化に関与する因子かどうかを検討する。関節円板癒着の時期においては、免疫組織化学染色にてTGF-βとα-smooth muscle actin の発現を検索する。(免疫染色用試薬、抗体などに研究費使用) ②マウス滑膜細胞とマウス関節円板細胞の初代培養:WTマウスとTNCKOマウスからマイクロ顕微鏡(Carl Zweiss)を用いて滑膜組織と関節円板組織を摘出する。滑膜組織は、10%FBS添加DMEMを用いて37℃、5%CO2の条件下、out growth法で培養し、マウス滑膜細胞の初代培養を行う。また、関節円板組織はコラゲナーゼA(Roche Diagnostics Japan) で処置したのち10%FBS添加DMEM 、37℃、5%CO2の条件で培養し、マウス関節円板細胞の初代培養を行う。(実験動物、細胞培養用試薬などに研究費使用)
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