研究課題/領域番号 |
24593000
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
有吉 渉 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (40405551)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / シゾフィラン / dectin-1 / ドラッグデリバリー |
研究概要 |
本研究は、破骨細胞前駆細胞において恒常的に発現している糖鎖認識タンパクdectin-1に注目し、dectin-1と特異的な結合能を有するシゾフィラン(SPG)の一部を核酸と置換した複合体を用いて、破骨細胞に選択的なドラッグデリバリーシステム(DDS)を構築することを目的としている。 平成24年度は破骨細胞前駆細胞株であるRAW264.7細胞を用いて、SPG-核酸複合体の導入を行った。破骨細胞分化抑制に関するターゲット分子として、TNF受容体ファミリーのシグナル伝達因子であるTNF receptor associated factor 6 (TRAF6)を選択した。SPG-TRAF6 siRNA複合体を調製し、dectin-1過剰発現RAW細胞に添加し、培養を行った。Real-time RT-PCR分析の結果より、添加後1時間の細胞において、TRAF6 mRNAの発現レベルに26%の抑制が観察された。また、破骨細胞分化因子(receptor activator of NF-κB ligand; RANKL)存在下にSPG-TRAF6 siRNAを添加して7日間培養を行い、破骨細胞のマーカー分子である酒石酸耐性酸程ファターゼ(tartrate resistant acid phosphatase; TRAP)染色により、破骨細胞様細胞形成数を計測したところ、RANKLによる破骨細胞分化誘導は、SPG-TRAF6 siRNAの添加により、有意に抑制された。 以上の結果から、SPGが、破骨細胞に対する選択的な核酸デリバリーの材料として十分に期待ができるものであり、このDDSシステムの構築がいまだ問題点が数多く残っている骨粗鬆症の新たな治療法の確立の一助になると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標は、「RAW264.7細胞を用いたSPG導入条件の設定」であり、破骨細胞前駆細胞株を用いたSPG-核酸複合体の導入を行い、RANKL刺激下での破骨細胞形成の抑制に最も適した条件を検索することであった。「研究実績の概要」の項目に示すように、TRAF6を抑制のターゲット分子とした遺伝子デリバリーにより、有意な破骨細胞分化抑制効果を誘導することができた。こうした観点からは、当該研究の進捗状況についてはおおむね順調に進展していると考えられる。ただし、破骨細胞の成熟度や、機能である骨吸収能に関する評価が完了していない点等、本ドラッグデリバリーシステムによる生物学的効果を評価する上で、追加しなければならない検討項目はまだ残されている。 また、抑制のターゲット分子についても破骨細胞の分化・成熟・骨吸収能に関与する分子として数多くの報告があり、これらの分子に対する遺伝子ノックダウンにより、さらに選択性や抑制効率の高いドラッグデリバリーシステムの確立の可能性も考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の記載に従い、平成25年度の目標は「選択的ノックダウンによるphenotypeへの影響の確認」とし、平成24年度に得られた知見をもとに、RAW264.7細胞にSPG-核酸複合体を導入し、破骨細胞の分化・骨吸収活性、また関連するシグナル分子の発現への影響を同定していく。 まず、phenotypeの確認として、ドラッグデリバリー後の細胞の遺伝子phenotypeの変化を同定するために、Real-time RT-PCRを用いて、mRNAの発現量を定量する。さらに、破骨細胞の機能に対する影響として、リン酸カルシウム被覆プレート上で培養を行い、細胞を除去後、形成された骨吸収窩数を光学顕微鏡下に観察、計測して、本ドラッグデリバリーシステムが破骨細胞の骨吸収能に及ぼす影響を評価する。また、得られた結果をもとに、破骨細胞の分化や骨吸収活性に関与する細胞内シグナル分子の活性化レベルをWestern blotting法を用いて評価する。 一方、新規のターゲット分子としては、Orai1, NFATc1, OC-STAMPなどを考えており、これらの遺伝子のノックダウンを目的とした核酸複合体(siRNA、アンチセンスオリゴDNA)を作製し、同様に破骨細胞の分化および骨吸収活性に及ぼす作用について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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