研究課題/領域番号 |
24593002
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
杉山 芳樹 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00162909)
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研究分担者 |
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯学 / 臨床 / 加速器 / 分析化学 / 人間生活環境 / 金属アレルギー / 口腔扁平苔癬 |
研究概要 |
口腔扁平苔癬の原因の一つに金属アレルギ-があげられる。金属元素が抗原となるためにはハプテンとして体内タンパク質と結合する過程が必須で、口腔扁平苔癬患者の口腔粘膜には何らかの形で原因金属元素が存在することが予想される。 そこで本研究の平成24年度の研究計画に従い、口腔扁平苔癬患者28名から口腔粘膜組織(以下口腔粘膜)、唾液、血清を収集した。これらの検体を硝酸灰化法にて液化処理してPIXE法にて各組織の元素分析を行い比較検討した。 今年度は、亜鉛、スズ、パラジウムなど微量・超微量元素を含む17種の必須元素と、アルミニウム、チタン、ガリウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、銀、アンチモン、金、水銀、鉛など11種の非必須元素(汚染元素)を検出し、それぞれの検出率および含有量を測定した。 非必須元素は本来生体に不要な元素で、その存在と疾患との関係が注目される。そこで、非必須元素に注目すると、口腔粘膜の元素検出率は、銀(33.9%)、金(44.1%)が健常者と比較して有意に高かった。また、含有量はアルミニウムとチタンが健常者よりも有意に高い値であった。さらに有意差はないが、パラジウムも高い含有量を示していた。口腔扁平苔癬患者の口腔粘膜、血清、唾液の三者を比較すると、粘膜組織は血清、唾液よりも高い量の非必須元素を含有していた。また、唾液と血清の比較では一般に非必須元素の含有量は血清の方が高い値を示すが、アルミニウムは唾液の方が血清よりも有意に高い含有量を呈していた。また検出率をみると、非必須元素は唾液の方が高い傾向にあった。 現在の所、口腔粘膜には多種の非必須元素が高濃度に含まれる。また、唾液には非必須元素が含まれる率が高く、一方、含有量は血清の方が高い傾向にあり、元素によりこの傾向は異なっていた。今後さらなる検体数の増加が必要と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は、病変組織の集積を行っている。今年度の口腔扁平苔癬の口腔粘膜組織は28検体であり、このうち口腔粘膜組織、血清、唾液の三者が同一個体の症例は17例である。外来受診者数から考えると検体の集積は順調に行っていると思われる。 二年前の東日本大震災の際に、一時、サイクロトロンの軌道に誤差が生じたが、今年度は、亜鉛、スズ、パラジウムなど微量・超微量元素を含む17種の必須元素と、11種の非必須元素(汚染元素)を検出し、それぞれの検出率および含有量を順調に測定することができた。また、従来の口腔扁平苔癬と一括されていた病変の中には、アレルギー反応によって起こると考えられている上皮性異形成を伴う口腔扁平苔癬様病変(oral lichenoid lesion: OLL)が含まれる。現在、口腔粘膜組織は、このOLLと考えられる組織を分けて検索を行っている。さらに、口腔組織の一部は凍結保存してあるため、今後、一括して行う各元素の局在性の解析に使用したい。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、病変組織の集積を行っている。今年度の扁平苔癬の口腔粘膜組織は28検体である。しかし、この内、口腔粘膜組織、血清、唾液の三者が同一個体の症例は17例である。三者の組織の元素出現率、含有量の比較の測定結果の精度は、各検体が同一個体である方が高い。そこで今後は、同一個体での三者に比較できるような症例を集積したい。さらに、OLLの症例もできるだけ多く集積したいと思う。また、他疾患で手術が必要な患者に説明と同意を得て対照となる口腔粘膜、血清、唾液の集積も行いたい。これらの研究成果の一部を第19回NMCC共同利用研究成果発表会、第21回国際口腔外科学会で発表予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は元素分析に必要な消耗品、学会参加のための旅費を中心とする。物品日は消耗品として29万円、旅費は国際学会がスペインであるためを48万円計上した。PIXE法は感度が高いため、元素分析に使用する器具に金属製は使えずテフロン製であり、消耗品は各年度30万円程度を予定している。さらに、今年度システム変更のため購入しなかったデータ処理用PCを購入予定である。
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