研究実績の概要 |
われわれはこれまで口腔扁平苔癬(oral lichen planus: OLP)の原因の一つとして生体に含まれる金属アレルギーに着目してきた。 そこで今年度は、PIXE法を利用して健常粘膜(健常群)と病理組織学的にOLPと診断されたOLP病変粘膜(pOLP群)との含有元素を比較検討した。さらに、OLPに含まれる口腔扁平苔癬様病変(oral lichenoid lesion: OLL)群を、臨床検査から抽出して同様に検討した。。 本年度までの分析の結果、健常群(100例)、pOLP群(72例)からSi、V、Cr、Mnなど17種類の必須微量元素とAl、Ti、Ag、Au、Hg、Pbなど12種類の汚染元素が検出された。検出率では必須元素は有意差があったのはSi、Mnなど5元素であったが、この5元素は全てpOLP群が低かった。一方、汚染元素については有意差があったのはAuとYで、pOLP群が有意に高い結果であった。含有量でみると、必須元素ではCu,Ni,Rbに有意差があったが、どれも健常者群の方が高い結果であった。汚染元素については、Al、Ti、Ga、Yの4元素に有意差があったが、必須元素と異なり、OLP群の方が含有量が高い結果であった。pOLP群の汚染元素は、健常者群と比べ検出率は低いが、各々の汚染元素の含有量は多かった。 pOLP群から、パッチテスト結果や臨床像から金属アレルギーが強く疑われる12例をOLL群とした。検出率ではAuが12例中8例にみられた。また、含有率ではCr、Mn、Al、Tiが健常者群よりも有意に高かった。 これを総合すると、PIXE法による元素分析はは、直接的にOLP群A(+)の原因元素を同定する可能性を示唆していた。また、汚染元素はアレルギーの原因ともなるが、それとは金属毒性など別の機序でOLPの発症に影響を与えている可能性がある。
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