研究課題/領域番号 |
24593003
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
熊谷 章子 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (10286594)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 活性酸素 / 酸化ストレス / 口腔粘膜 / 角化病変 / 白板症 / 口腔扁平苔癬 / 加齢 |
研究実績の概要 |
白板症や口腔扁平苔癬などの口腔粘膜角化病変は、中年から高齢者に多くみられる。われわれは加齢に伴う抗酸化作用の低下と、酸化損傷分子の蓄積による酸化ストレスの影響からアプローチし、口腔粘膜角化病変発症のメカニズムを研究している。対象の内訳は30歳台から80歳台で、疾患別では白板症患者10名、口腔扁平苔癬患者21名である。 対象者血清中、尿中の抗酸化物質および酸化ストレスマーカーを測定し、白板症患者群、口腔扁平苔癬患者群、健常者群で比較検討した。その結果、口腔扁平苔癬患者の血清中ビタミンAとCが、白板症患者、健常者との間に有意差を認めた。前年度の結果では、口腔扁平苔癬患者の血清中ビタミンC値が白板症患者、健常者との間に有意差を認めるのみであったため、今後さらに対象数を増やすことで分析結果を確立できると思われる。また、生活習慣等の患者背景による影響と測定値について分析したが、前年度と同様に有意な結果は得られなかった。 酸化ストレスマーカーである抗ヘキサノイルリジン抗体を使用して、対象者から採取した病変組織標本を免疫組織化学的に染色したところ、非角化組織と比較し、有棘細胞層から基底細胞層にまで及ぶ発色が確認された。これは、慢性炎症である口腔扁平苔癬はもちろん、臨床的に炎症所見を持たない白板症でも確認された。口腔角化病変における酸化ストレスの局在性を明らかにすることができたことから、活性酸素の局所的影響による発症が示唆された。 さらに、角化病変組織からタンパクを抽出し、ウェスタンブロッティング法で、酸化ストレスマーカーであるカルボニル化タンパクを確認したところ、100kD付近に見られたバンドが強く発色した。そのタンパク同定が可能であれば、口腔粘膜角化病変のレドックス制御機構の解明につながるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルボニル化タンパクを同定するため、2次元電気泳動によるタンパクの網羅的解析を試みたが、提示できるまでの泳動像が得られず、現時点ではSDS-PAGEによる方法にとどまり、それによってもタンパク同定が可能と判断されたため、そのまま研究を遂行している。 また、病変組織の免疫組織学的染色を行うにあたり、当初はあらゆる酸化ストレスマーカーを解析するために、使用する抗体を多数考えていたが、研究場所の設備や研究費の制限のため、脂質の酸化ストレスマーカーである抗ヘキサノイルリジン抗体を使用した実験のみにとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
口腔粘膜角化病変に見られた、酸化ストレスマーカーであるカルボニル化タンパクを同定する。得られた結果と、免疫組織学的染色の結果を踏まえ、活性酸素の局所的影響を考察する。そして考えられる口腔粘膜角化病変の治療および予防戦略について提案できると考えている。 病変から抽出された総タンパクのカルボニル化についても、プレートリーダーを利用して分析し、現時点で明確にできていない生活習慣などの患者背景と酸化ストレスとの関与についても、併せて解明していく。
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