研究課題/領域番号 |
24593004
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
田村 暢章 明海大学, 歯学部, 助教 (00363218)
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研究分担者 |
友村 明人 明海大学, 歯学部, 教授 (60188810)
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キーワード | 炎症性骨吸収 / カルデクリン |
研究概要 |
細菌感染に伴う骨の破壊吸収は,主としてグラム陰性菌の外膜成分であるリポ多糖( Lipopolysaccharide; LPS )が重要な病原因子の一つとして考えられている.カルデクリン( Caldecrin )は友村らによって精製・クローニングされた急性膵炎発症時に頻発する低カルシウム血症の惹起因子であるが,破骨細胞の分化を抑制する因子として,また成熟破骨細胞機能を抑制する因子として報告された.これまでに骨吸収促進因子である炎症性サイトカインによるリウマチ患者の滑膜線維芽細胞において発現増加するRANKL mRNAをカルデクリンが抑制することを見出し報告していることから、RANKL発現が亢進している炎症組織内での破骨細胞分化をカルデクリンが抑制することが示唆されている.カルデクリンの炎症性に作用する破骨細胞への抑制機構のメカニズムをより詳細に探り,解析していくことで,インプラント周囲炎のような炎症性骨吸収治療への創薬をめざす基盤研究として進めている. マウス骨髄由来マクロファージにRANKL添加により破骨細胞に分化する系を用いてLPS単独あるいはRANKL+LPSを添加すると破骨細胞の形成が阻害された.一方,低濃度のRANKL前処理によりLPS添加で破骨細胞が効率よく形成された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【材料および方法】 マウス骨髄マクロファージを低濃度で培養を行ったのち,RANKL, TNF, LPSに対する影響を評価した.またマウス骨髄マクロファージとマウス頭蓋冠由来骨芽細胞での共存培養においても同様にして評価した. 【結果】 LPSでの条件を検討したところ,単独添加では破骨細胞分化を抑制していたが,低濃度でのRANKL刺激(48hr)でのPriming処理をしたうえで同等のLPS添加であれば破骨細胞への分化と機能の発現がみられたが,予想に反しLPSが共存するとRANKLによる破骨細胞分化が抑制された.低濃度のRANKL処理がLPSによる破骨細胞誘導に必要であることが明らかになった.LPS刺激による破骨細胞形成系の構築に時間がかかったので計画の達成に遅れが生じていた.またこれに加えて,骨髄マクロファージと骨芽細胞を用いた共存培養法においても検討したところ,LPSによる破骨細胞分化(TRAP陽性)をカルデクリン添加により抑制傾向を示した.破骨細胞だけに作用することもさることながら,骨芽細胞に対するカルデクリンの作用点を解明すべく,シグナルについては現在解析中である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに細菌感染に関連した破骨細胞性骨吸収に対してCaldecrinは抑制的に作用していることが示唆されているため,上記の作用をCaldecrinは抑制的に影響を与えるのか評価するのみならず,骨芽細胞を介した破骨細胞の分化への影響をも解明すべく,炎症性サイトカインによる分化マウス破骨細胞前駆細胞および骨吸収モデルマウスにおける骨吸収能に対するカルデクリンの抑制効果を,各種サイトカイン受容体下流の破骨細胞シグナル(各濃度での)への影響で明確にする.
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次年度の研究費の使用計画 |
LPSでの条件を検討したところ,予想に反した結果となった(単独添加では破骨細胞分化を抑制していたが,低濃度でのRANKL刺激(48hr)でのPriming処理をしたうえで同等のLPS添加であれば破骨細胞への分化と機能の発現がみられたが,LPSが共存するとRANKLによる破骨細胞分化が抑制された.低濃度のRANKL処理がLPSによる破骨細胞誘導に必要であることが明らかになった.)ため,LPS刺激による破骨細胞形成系の構築に時間がかかったので計画の達成に遅れが生じていた.また,骨髄マクロファージと骨芽細胞を用いた共存培養法においても検討し,LPSによる破骨細胞分化(TRAP陽性)をカルデクリン添加により抑制傾向を示した.破骨細胞だけに作用することもさることながら,骨芽細胞に対するカルデクリンの作用点を解明すべく,シグナルについては現在解析中である. LPSが結合するTLR下流にあるMyD88を介してTRAF6-TAB2/3-TAK1からNF-kappaBの活性化経路はRANKLが結合するRANK下流シグナルと共有している.この複合体形成にはTRAF6のK63型ユビキチン化が必要である.一方,脱ユビチキン化酵素であるA20はTRAF6下流シグナルを抑制する.そこで,マウス骨髄細胞由来マクロファージ細胞を用いて,RANKLプライミング時およびRANKLプライミング後のLPS添加時のA20の発現,TRAF6のユビキチン化,IKKの活性化,複合体形成を検討し,カルデクリンはこれらの変化を抑制するかどうかを検討する.また骨芽細胞へのカルデクリンの作用点を解明すべく,LPSの骨芽細胞における炎症性サイトカイン産生に対するカルデクリンの影響や,マウス頭蓋冠由来の骨芽細胞と骨髄細胞を用いた共存培養にLPSを投与し破骨細胞を誘導する実験系を用いてカルデクリン投与がどのようにこれを阻害するかどうかをシグナル伝達系で検討する.
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