研究課題
基盤研究(C)
癌治療において再発・転移の有無は重要な診断情報であり、その後の治療方針に大きく影響する。我々はこれまで、循環血清中の多くのfree DNA、中でも、腫瘍細胞のfree DNAの特定に成功し、再発・転移の早期診断や治療の効果判定に役立てている。現在までに行われた口腔扁平上皮癌におけるヘテロ接合性消失(LOH)に関する研究から、多くのマイクロサテライト領域が判明している。このLOHの局在情報を癌細胞の指紋と考え、循環血清中の腫瘍free DNAの検出を行う研究を可能とした。さらに、口腔扁平上皮癌患者から抽出したDNAを用い、DNAマッピングアレイ解析を用いた全ゲノム上のLOHとコピー数異常の有無を検索し、その結果、数百~数千の口腔癌に関与する新規未知癌抑制遺伝子座位が一度に同定することを可能とした。本研究はさらに発展させ、口腔扁平上皮癌患者から抽出したDNAならびにmRNAを用い、全ゲノム上のゲノムコピー数異常の解析ならびに同座位に存在する転移関連遺伝子候補をリストアップし、候補遺伝子のmRNA発現状況を定量的Real-time PCR法により検証した。その結果、体内に潜む再発転移細胞中に、口腔癌の再発・転移関連遺伝子の同定を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
引き続き、口腔癌患者のDNAの検体数を増やし、口腔癌の診断・治療に応用出来るように大規模解析を予定している。
平成25年度は、前年度に引き続き、多数の口腔癌患者組織、さらに非扁平上皮癌(腺系癌など)を用いて、以下の研究を行う。1) 実験進行中に新たに入手した試料についても随時DNAを抽出する。2) 口腔非扁平上皮癌についても全ゲノム上のマイクロサテライト領域をDNAマッピングアレイ解析を用いて行う。3) 既知癌抑制遺伝子の異常との関連性を検討し、さらに予後や悪性度との比較も行う。4) 病理組織学的に所属リンパ節転移陽性例(pN(+))3例および陰性例(pN(-))2例をGeneChip® Mapping 10K Arrayにより解析し、pN(-)例と比較してpN(+)例に共通して認められるゲノムコピー数異常を検出、同座位に存在する転移関連遺伝子候補をリストアップした。さらに候補遺伝子のmRNA発現状況を定量的Real-time PCR法により検証する。以上の結果をもとに、口腔扁平上皮癌の再発・転移過程に関与する一連の癌抑制遺伝子群の局在を同定することと、体内に潜む微少転移細胞や転移の発現パターンの相違の役割を考察する。
1)患者検体:東京歯科大学口腔外科を受診した100名の口腔扁平上皮癌患者から採取した検体を試料とする。試料は生検時または手術時に採取・保存しておく(採血も同時に行う)。2)DNAの抽出:腫瘍ならびに正常DNAは通法に従いフェノール・クロロフォルム抽出法により抽出・加工・調整する。採血しておいた全血液は遠心分離し白血球から正常DNAを抽出する。3)PCRおよびマイクロサテライト解析:抽出したDNAを鋳型としPCR法 (polymerase chain reaction) を用いて増幅させ、マイクロサテライト解析を行なう。この解析は、Affymetrix社製のGeneChip DNAマッピングアレイ解析を行い全染色体上の構造異常をマイクロサテライト領域を一挙に特定する。4)ヘテロ接合性消失(LOH)の評価:得られたマイクロサテライトバンドをコンピューター上にスキャンし、その強度を数値化する。腫瘍から得られたDNAにおけるシグナル強度を、対応する正常組織または血液試料から得られたDNAと比較し、シグナル強度が50%以下をLOHと判定する。5)結果の再現性の確認:LOHを認めた試料については結果に再現性があることを確認するため、再度PCRマイクロサテライト解析を行う。6)解析:得られたLOHとコピー数異常(CNA)の結果と、臨床的・病理組織学的特性からフィッシャーの直接確率法を用いて、統計解析し再発・転移の予測の関係について検討を行う。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 2件)
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology
巻: 25 ページ: 129-133
巻: 25 ページ: in press
10.1016/j.ajoms.2012.12.007
日本口腔腫瘍学会雑誌
巻: 25 ページ: 印刷中
10.1016/j.ajoms.2013.02.012
The Bulletin Tokyo Dental College
巻: 54 ページ: in press
巻: 24 ページ: 189-194