平成25年度までの研究では、マウスの両側の背部に独立した2個のSCCKN移植腫瘍を作成した。pE3C1(10μg/100μl)およびコントロールを移植腫瘍の一方に注射を7日に1回の割合で行った。その後、経時的に両側の腫瘍の大きさを測定した。その結果、pE3C1群はコントロール群よりも延命率を向上させた。さらに、pE3C1群は両方の腫瘍の増大速度が抑制されていた。また、他の扁平上皮癌細胞株(A431)を用いて同様の研究を行ったところ、SCCKNを用いた時と同じ結果を得ることが出来た。次に、治療効果が使用するDNAの濃度に依存するかを検討したところ、1μg/100μlでも同様の治療効果を認めた。この結果より、直接pE3C1を腫瘍に注射しなくてもpE3C1による遺伝子治療が可能ではないかと考えられた。それ故、7日に1回の割合でヌードマウス移植腫瘍にpE3C1による遺伝子治療を皮下注射で行った。その結果、pE3C1の皮下注射により治療を行った群はコントロール群に対して延命率の向上や腫瘍増大速度の抑制を認めた。また、pE3C1群の腫瘍は腫瘍組織で出血性壊死を起こしていることが確認された。その作用機序として腫瘍血管の異常が考えられた。平成26年度はその仮説のもとに、ヌードマウス移植腫瘍にmockまたはE3C1で遺伝子治療を行った後にインディアンインクを静脈内投与し腫瘍血管を描出し腫瘍血管に及ぼす影響について検討してみた。その結果、pE3C1群は腫瘍血管の分岐形態に変化を認めた。また、腫瘍表面の毛細血管の減少が認められ、血管新制や形態異常による影響ではないかと考えられた。
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