研究課題/領域番号 |
24593015
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
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研究分担者 |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
本田 雅規 日本大学, 歯学部, 准教授 (70361623)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メラトニン / 口腔粘膜障害 / 放射線治療 / 唾液腺障害 |
研究概要 |
超高齢社会が進行しつつあるわが国では、今後も悪性腫瘍の罹患率が上昇し、患者の高齢化に伴い、化学療法や放射線療法の適応となる症例も増加することが予想される。これらの治療に伴って発症する重篤な口腔粘膜障害や唾液腺障害は、患者のQOL を低下させるのみならず、治療の達成度をも左右する重要な因子となる。代表的な放射線治療に用いられるX線では、電離した放射線がフリーラジカル(OH-)を産生し、これがDNA にダメージを与え、また、酸素が多く存在する環境ではH2O との反応でフリーラジカルがより多く発生する。すなわち活性酸素やフリーラジカルが、腫瘍組織を攻撃するのが放射線治療の代表的作用機序で、これは腫瘍組織のみならず、正常組織にもダメージを与えることとなる。一方、メラトニンは、主に夜間、松果体より分泌される概日リズム調節ホルモンで、様々な生理作用が報告されているとともに、フリーラジカルスカベンジャーとして強い抗酸化作用を持つことが知られている。近年メラトニンは唾液中においても存在が確認されており、これに関連してわれわれは、唾液腺にメラトニン合成酵素が発現していることをはじめて確認し、唾液腺自体、さらには口腔粘膜に対して何らかの生理的役割を担っている可能性を報告してきた。以上のことから、メラトニンを応用し、その極めて強い抗酸化作用を利用することによりフリーラジカルに起因する口腔粘膜障害や唾液腺障害の発症予防、進行抑制あるいは治療を図ることができる可能性に着目し、今年度は、放射線照射によるマウス口腔粘膜および唾液腺における障害について検討した。その結果、15Gy単回照射により口腔粘膜、舌、唾液腺への放射線障害の程度を把握することができた。そこで放射線照射前、および照射後のメラトニン投与による口腔粘膜炎の予防効果について検討した。今後はこれらをさらに解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、今年度はマウスに対して放射線照射を行い、その照射量、回数による口腔粘膜炎、舌炎、唾液腺炎などの状態について組織学的、免疫組織化学的に検討し、把握する予定であったが、概ね順調に進められており、さらに照射、前、中、後におけるメラトニン投与方法についても検討を進めており、現時点では本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られている研究結果をもとに、放射線照射前メラトニン投与による放射線性口腔粘膜障害および唾液腺障害の発症予防効果について検討する。具体的には、放射線照射1 時間前に、メラトニン100mg/kg をマウスに腹腔内投与もしくは経口投与し、放射線照射を施行し、急性期における口腔粘膜障害の発症予防効果および遅発期における唾液腺障害の発症予防効果の有無について組織学的に検討する。さらに、メラトニン非投与群と投与群間で放射線障害の発症に差があれば、それらの組織を用いて上皮細胞に対するマーカーを用いて免疫組織化学的に検討するとともに、TUNEL染色などにより細胞のアポトーシスを、抗8-OHdG 抗体を用いてDNA 損傷を、抗neuroketal 抗体や抗4-hydroxynonenal 抗体を用いて脂質の酸化ダメージを、抗SOD1 抗体や抗nNOS 抗体、抗 HIF1a 抗体を用いてタンパク質の酸化ダメージを免疫組織化学的に検討することで、メラトニン投与による放射線副作用発症予防効果の発現のメカニズムを解析する。また、放射線照射前、照射中および照射後メラトニン投与による放射線性口腔粘膜障害および唾液腺障害の発症予防、進行抑制、治療効果について検討するために、放射線照射1 時間前に、メラトニン100mg/kg をマウスに腹腔内投与もしくは経口投与し、放射線照射を施行し、照射中および照射後にもメラトニンの経口投与を継続し、急性期における口腔粘膜障害の発症予防、進行抑制、治療効果および遅発期における唾液腺障害の発症予防、進行抑制、治療効果の有無につき組織学的に検討する。また、口腔粘膜上皮細胞に放射線照射を行った際のメラトニンの防護効果についても併せて検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には、研究計画に基づき、細胞培養用試薬類、分子細胞生物学的試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、実験用動物、などに物品費を使用し、成果発表のために旅費を使用するとともに、人件費、謝金、論文印刷費などを計上している。前年度からの繰越金が発生しているのは、今年度、メラトニン投与と放射線照射についての解析が途上であるためであり、次年度以降はこの解析を進めるとともに、さらにメラトニン投与方法を追加し、放射線防護効果について検討するとともに、in vitroにおける細胞へのメラトニンの放射線防護についても検討する予定であることから、細胞培養、分子細胞生物学的検討、生化学的検討、組織学的検討が必要であり、本来今年度に使用する予定であったこれらの繰越金を有効に使用して、これらの途上の解析を進め、先行している結果とともに、本研究を順調に進展させていく予定である。
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