研究課題/領域番号 |
24593015
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
徳山 麗子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20380090)
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研究分担者 |
里村 一人 鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
本田 雅規 日本大学, 歯学部, 准教授 (70361623)
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キーワード | メラトニン / 口腔粘膜障害 / 放射線治療 / 唾液腺障害 |
研究概要 |
超高齢社会が進行しつつあるわが国では、今後も悪性腫瘍の罹患率が上昇し、患者の高齢化に伴い、化学療法や放射線療法の適応となる症例も増加することが予想される。これらの治療に伴って発症する重篤な口腔粘膜障害や唾液腺障害は、患者のQOL を低下させるのみならず、治療の達成度をも左右する重要な因子となる。代表的な放射線治療に用いられるX線では、電離した放射線がフリーラジカル(OH-)を産生し、これがDNA にダメージを与え、また、酸素が多く存在する環境ではH2O との反応でフリーラジカルがより多く発生する。すなわち活性酸素やフリーラジカルが、腫瘍組織を攻撃するのが放射線治療の代表的作用機序で、これは腫瘍組織のみならず、正常組織にもダメージを与えることとなる。一方、メラトニンは、主に夜間、松果体より分泌される概日リズム調節ホルモンで、様 々な生理作用が報告されているとともに、フリーラジカルスカベンジャーとして強い抗酸化作用を持つことが知られている。以上のことから、メラトニンを応用し、その極めて強い抗酸化作用を利用することによりフリーラジカルに起因する口腔粘膜障害や唾液腺障害の発症予防、進行抑制あるいは治療を図ることができる可能性に着目し、昨年度までに、放射線照射によるマウス口腔粘膜における障害について検討した。その結果、15Gy単回照射によりダメージを受けた頬粘膜、舌の組織において、メラトニンを腹腔内投与および傾向投与することによりそのダメージを回避できることを見出した。この現症には組織学的検討の結果、アポトーシスが関与していることが考えられる。今後は、さらにメラトニンの詳細な放射線照射に伴う口腔粘膜障害の予防効果についてメカニズムを解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では今年度はマウスに対して放射線照射を行い、その照射に併発する口腔粘膜障害についてメラトニンの予防効果の有無を検討する予定であったが、概ね順調に進められており、さらに今後は得られたデータをもとにメラトニンの放射線防護作用のメカニズムについて検討する予定であり、これらも現時点ですでに順調に解析を進めている経過であり、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた、メラトニン投与により放射線照射に伴う口腔粘膜障害を予防し得た組織に対して、免疫組織化学的検討や組織学的検討を加えメカニズムを詳細に検討するとともに、in vitroにおいても口腔粘膜上皮細胞あるいは歯肉線維芽細胞などの口腔粘膜細胞を用いて、放射線照射を行い、メラトニンを投与することで放射線障害の予防、あるいは防護効果があるか否かを検討する予定である。このとき、細胞における酸化ダメージ、ミトコンドリアダメージ、DNA損傷などについても詳細に検討し、今後のメラトニンの臨床応用を目指していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの繰越金が発生しているのは、今年度、メラトニン投与と放射線照射との解析を進める上で、組織学的検討、免疫組織化学的検討を用いた解析が途上であるためであり、次年度以降はこの解析を進めるとともに、さらにメラトニン投与における放射線防護効果のメカニズムについて詳細に検討するために、本来今年度に使用する予定であったこれらの繰越金を有効に使用して細胞培養、分子細胞生物学的検討、生化学的検討、組織学的検討を進め、先行している結果とともに本研究を順調に進展させていく予定である。 次年度には研究計画に基づき、細胞培養試薬類、分子細胞生物学的検討試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、実験用動物などに物品費として使用するとともに、成果発表のための旅費、人件費、謝金、論文印刷費などに使用する。具体的には、前年度までに解析が途上であったメラトニン投与による放射線防護効果に関するメカニズムの解析のための細胞培養、組織学的検討、分子生物学的検討などに使用する予定である。
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