愛知学院大学歯学部付属病院に事務局のある国連認定法人(ロスター)日本口唇口蓋裂協会(NPO)に設置されている無料電話相談(ホットライン)に寄せられた口唇口蓋裂の悩み486件について分析して、口唇口蓋裂に対する心理的ケアの在り方を検討した。 電話相談(ホットライン)に寄せられた相談者の半数以上が母親であり、次いで父親、本人の順となり、他より突出していた。父親より母親のほうが多く、母親が不安などの心理的負担を抱えており切羽詰まった状況に追いこまれている実態を垣間見ることができた。患児(者)を学校制度に即して発達段階別に分類すると、「誕生~1歳」が最も多く、次いで「成人(23歳~)」、「出生前」の順になった。相談者別の相談内容は、母親、父親、本人の三者に共通するのは「手術方法」と「病院紹介」の2件で、最新の施設で高度な診断・治療を求める要求があるにもかかわらずそれが満たされず、ストレスを強く感じている様子がうかがえた。両親の役割や立場の違いにより事態の認識と対応には違いがみられたが、心理的ケアはとりわけ母親に必要であり、その内容は育児支援と心の安定が中心で、父親には医療情報の提供が必要であった。本人からは、「遺伝」や「結婚」、「醜形不安」の問題が多く寄せられた。青年期から成人期は、将来の配偶者選択の時期であり、結婚、妊娠・出産といった問題はその後の人生を左右する重大事である。したがって、受容や共感を中核とするカウンセリング技法だけの心理的ケアだけではなく、問題解決に適した他の心理療法を導入することも必要である。心理的ケアを行うには、人間の心身のメカニズムや回復を援助する方法について正しい知識を持つこと、人間の心を大切にする心構えが必要と考え、「口唇口蓋裂に対する心理的ケアガイドブック」を作成した。
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