研究課題/領域番号 |
24593020
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
野崎 中成 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (90281683)
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キーワード | 再生医学 / 再生医療 / 歯科 / 多能性 / リプログラミング |
研究概要 |
体細胞のリプログラミングの初期に、多能性遺伝子座にあるNanogとEsrrbの転写が誘導されるが、その際にエピジェネティクス修飾因子であるParp1とTet2がその遺伝子座へ働く。すなわち、ヒストンを修飾することでクロマチンを活性化し、多能性遺伝子座領域にある遺伝子の転写を誘導できる。Parp1が担う翻訳後修飾であるpoly(ADP-ribosy)lation (PARylation)は、クロマチン再構築とエピネティックス修飾を介して、リブログラミング過程を制御する可能性がある。翻訳後修飾のリプログラミングへの関与を明らかにすることは、リプログラミング因子の解明につながるため意義がある。内在性の多能性マーカーの発現は、Parp1遺伝子型により影響を受ける可能性があるため、Parp1ホモ欠損型とParp1野生型のマウスES細胞株を用いたアレイ解析データの詳細な分析を行った。Parp1ホモ欠損型の2クローン株(210-58, 226-47)とParp1野生型(J1)のES細胞株は、研究代表者らがジーンターゲティングにより作製したものを用いた。各クローンは3つのindependentなアレイ解析を行い、平均を算出し、Parp1ホモ欠損型とParp1野生型を比較した。Oct3/4の発現は、210-58と226-47で各々、1.4倍、1.3倍に上昇した。Sox2の発現は、210-58と226-47で各々、0.86倍、0.67倍に減少した。この解析から、ES細胞で、Parp1遺伝子型により多能性のポテンシャルに影響する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Parp1は、リプログラミング因子であるOct3/4の転写を促進するという報告がある。内在性の多能性マーカーの発現は、Parp1遺伝子型に影響を受ける可能性が示唆されるため、Parp1ホモ欠損型と野生型細胞から抽出したRNAを用いて行ったアレイ解析データの詳細な解析を計画した。計画に従って研究を遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
翻訳後修飾のリプログラミングへの関与が注目されているが、明らかでない点が多い。ポリ(ADP-リボース)代謝は、Oct3/4とSox2の制御を介して、ゲノムのリプログラミングに関わっていることが報告された(Chiou, SH et al., 2013)。すなわち、ポリ(ADP-リボース)代謝は、Oct3/4の転写結合部位へのアクセスを制御する。また、Parp1は、Sox2と複合体を形成して多能性を制御している。これらの新しい知見は今後の研究の推進方策を考える上で重要な指針である。ポリ(ADP-リボース)代謝は、ポリ(ADP-リボース)の合成系と分解系に分けられる。合成系のParp1を阻害するとDNAの高メチル化が見られ、Parp1を過剰発現させると低メチル化がゲノムの広範囲に起こる。ポリ(ADP-リボース)代謝は広範なDNAメチル化パターンの維持に関与していると言える。一方、分解系のPargを強制発現させるとParp1活性は阻害される。また、PARylationのターゲットとなっているリプログラミング因子とADP-riboseの相互作用を介して、Parg遺伝子型がリプログラミング過程に影響する可能性が示唆される。リプログラミング因子としてmicroRNAの関与が報告されている。miR-302bcad/367やmiR-17-92,/miR-106b-25/miR-106a-363を細胞に導入するとリプログラミングを誘導することができる。microRNA 結合タンパク質であるAgoはPARylationにより修飾される。これらの事実は、リプログラミング過程においてmicroRNAを介した遺伝子発現の制御に、ポリ(ADP-リボース)代謝が関与する1つの根拠となる。ポリ(ADP-リボース)代謝を担うPargの遺伝子型が、リプログラミングに影響する可能性が示唆される。Pargホモ欠損型と野生型マウスのES細胞株よりRNAを調製する。microRNAアレイを用いて、microRNAの網羅的発現解析を行う。
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