研究課題/領域番号 |
24593022
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小堀 善則 北海道大学, 大学病院, 助教 (70374551)
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研究分担者 |
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 特任准教授 (40399952)
大賀 則孝 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 特任助教 (40548202)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腫瘍血管内皮 / アラキドン酸カスケード |
研究概要 |
口腔内組織は、歯周疾患や喫煙、熱刺激、香辛料刺激、義歯・補綴物による機械的刺激などで慢性炎症が発生しやすい環境下である。さまざまな環境要因による慢性炎症が、癌の発症や進展に関与していると最近考えられている(Coussens, L.M 2002 Nature)。腫瘍間質細胞は、プロスタグランジンやさまざまなケモカインなどメディエーターを放出し、癌の悪性化の進展の実行役と考えられてきている。 口腔癌においても、慢性炎症が発がん、癌の進展に関与する可能性がある。 慢性炎症下では、マクロファージを初めとして、さまざまな炎症性細胞が漏出して、腫瘍の転移に関連するとの報告も見られる。 われわれはこれまで腫瘍血管内皮細胞(Tumor Endothelial Cells: TEC)が正常血管内皮細胞(Normal Endothelial Cells: NEC)と比較して,①増殖能、運動能などの生物学的活性が高い②薬剤抵抗性を有する③特異的な遺伝子の発現する④染色体不安性があるなどさまざまな点で異なることが報告してきた。癌細胞におけるCOX-2の発現を中心としたアラキドン酸カスケードの亢進が、癌の進展に影響を及ぼすことは知られている。腫瘍血管内皮細胞を初めとする腫瘍間質細胞における、アラキドン酸カスケード経路の亢進と癌の進展の関連について検討した報告は少ない。H24年度の本研究では、腫瘍間質を構成する腫瘍血管内皮細胞におけるアラキドン酸経路におけるさまざまな分子の活性化の状態を解析・検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト舌癌細胞(HSC-3細胞)、ヒト高転移性腫瘍細胞、低転移性腫瘍細胞をヌードマウスに皮下移植し、腫瘍塊からの血管内皮マーカーであるCD31抗体と磁気ビーズを用いて、舌癌由来腫瘍血管内皮細胞とヒト高転移性腫瘍細胞由来腫瘍血管内皮細胞を分離・培養した。 正常コントロールとして、正常皮膚から血管内皮を分離・培養した。PCR法とフローサイトメーター解析で、分離したTECとNECにおいて血管内皮マーカー(CD31、54、105、144、146)の発現があることや管腔形成能など血管としての特性があることを確認した。一回の採取で、腫瘍組織中に血管内皮細胞は2~5%しかおらず、分離できた腫瘍血管内皮細胞はきわめて希少である。このように分離できた腫瘍血管内皮細胞が、血管内皮マーカーを発現し、他細胞の混入がないことを確認した後、培養し実験に用いた。正常血管内皮細胞 (NEC: Normal Endothelial cell)に比べ、腫瘍血管内皮 (TEC:Tumor Endothelial cell)において、アラキドン酸カスケードの代謝産物のシクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現が高く、COX-2が腫瘍血管内皮の生存に重要な役割を果たしていることを示した。また、ELIZA法を用いて、COX-2の代謝産物である、PGE2とPGI2が腫瘍血管内皮細胞で発現が高いことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
フローサイトメーターとウエスタンブロット法を用いて、アラキドン酸カスケード代謝産物のレセプター(EPレセプター)の発現を解析する。 TECにおいて、アラキドン酸カスケードでの代謝産物がオートクラインで用いられる可能性を検討する。レセプターの阻害剤が莫大な数があるCOX-2/プロスタグランジンE2(PGE2)阻害剤の中から,網羅的に今回我々が分離した腫瘍血管に対して抑制効果の報告があるCOX-2/プロスタグランジンE2(PGE2)阻害剤をピックアップする。その際, 論文報告から抽出された高精度のデータベースであるIngenuity Knowledge Base(IPA)を用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究費は2月末時点での収支決算となり886.090円の未使用があったが、3月に研究費を使用し現在の未使用額は23.983円となった。未使用額がある理由は研究が順調に進み、当初購入を予定していた消耗品の購入が必要なくなったためである。次年度では消耗品の追加購入が必要なため、未使用額は全て使用する予定である。
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