研究実績の概要 |
これまで、口腔癌細胞、上皮異型性細胞における新規癌マーカー候補分子の発現解析を中心に解析を行ってきた。ヒト由来口腔癌細胞株であるHSC-2, HSC-3におけるNKG2Dリガンドの発現について、フローサイトメーターで解析した。その結果、どちらの細胞ともNKG2Dリガンドの弱い発現を認めるのみであった。更に過去の病理標本を用いて、扁平上皮癌・上皮異型性・正常細胞それぞれについて、NKG2Dリガンドの発現を調べた。それぞれ20例ずつ検査したところ、正常細胞や上皮異型性細胞のみならず、扁平上皮癌の標本においても、NKG2Dリガンドの発現は見られなかった。 そこで、研究の方針を修正し、さらに同様の実験を免疫制御受容体であるPD-1リガンドに着目して行った。 その結果、フローサイトメトリーで扁平上皮癌細胞株(2種類)上にPD-1リガンドの高発現を認めた。更に、過去の病理標本を用いて、扁平上皮癌・上皮異型性・正常細胞それぞれについてPD-1リガンドを調べたところ、上皮異型性および扁平上皮癌の標本においてPD-1リガンドの発現を認めた。 以上の結果より、NKG2Dリガンドは口腔癌の新規癌マーカー候補分子としては難しいが、PD-1リガンドが口腔癌新規癌マーカー候補分子になりうること、さらにPD-1リガンドを用いることで口腔癌の早期診断につながるのみならず、PD-1リガンドをターゲットとした口腔癌の免疫療法への応用の可能性が示唆された。
|