研究課題/領域番号 |
24593033
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小泉 浩一 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (30335682)
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研究分担者 |
吉岡 幸男 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (20335665)
林堂 安貴 広島大学, 大学病院, 講師 (70243251)
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00169153)
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キーワード | VEGF / 口腔癌 / 分子標的治療 / オートクライン機構 |
研究概要 |
血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor:VEGF) は腫瘍細胞によって産生され、パラクライン機構を介して、腫瘍組織での血管新生を誘導し、腫瘍の増殖や浸潤・転移を制御していることが知られている。その一方で、我々は腫瘍細胞自身がVEGF受容体を発現していることを明らかにしており、細胞自身が産生するVEGFsがオートクライン機構を介して癌細胞の浸潤・転移に関与しているものと考え、その機構の解析を行うとともにVEGF・同受容体系を分子標的とした新しい治療法の開発を目指す。 (1)口腔扁平上皮癌細胞、唾液腺癌細胞および悪性黒色腫細胞でVEGF受容体の発現を確認した。VEGFが口腔癌細胞に与える影響について検討した結果、いずれの細胞も増殖能には影響を与えなかった。一方、運動能については亢進することが確認され、特に悪性黒色腫細胞では5ng/ml VEGF存在下では約3倍の亢進が見られた。 さらにその運動能はVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤やVEGF受容体の中和抗体による前処理により、抑制されたが、VEGFR2チロシンキナーゼ阻害剤では差違は認めなかった。(2)siRNAを用いてVEGFR1およびVEGFR2の発現を抑制したところ、AS-VEGFR1はVEGFsに関係なく運動能が低下したが、AS-VEGFR2はコントロールと同様の結果となった。また、口腔癌細胞の増殖能はAS-VEGFR1により抑制されたが、AS-VEGFR2では影響を受けなかった。(3)VEGF添加による細胞内シグナル伝達系を検討した結果、Erkのリン酸化はなく、Aktのリン酸化が確認された。さらにPI3-Akt系のシグナル伝達を抑制することで運動能は濃度依存的に低下した。 以上より、VEGF添加による口腔癌細胞の増殖能や運動能はVEGFR1-PI3-Akt系を介してオートクライン機構により制御されている可能性が考えられた。現在in vivoで口腔癌に対する分子標的治療の開発研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いずれの口腔癌細胞もVEGF受容体を発現しているにもかかわらず、VEGF添加による運動能は細胞間で差はあるものの影響があることを確認している。VEGF添加による運動能亢進が大きかった悪性黒色腫細胞で、そのシグナル伝達系がVEGFR1-PI3-Akt系である可能性が示唆されたため、現在は他の口腔癌細胞についても同様に検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた実験計画に従って今後はin vivoに重点を置き臨床的に検討していこうと考えている。 具体的にはヌードマウスを用い、その背部皮下に口腔癌細胞を移植し増殖能の比較検討を行う。ヌードマウス背部皮下に移植した口腔癌細胞を増殖させた後、In vitroの検討にて効果が認められたsiRNA(VEGFs、VEGFR1、VEGFR2)を遺伝子銃(Biorad 社製:現有)、またはエレ クトロポレーションシステムを用いて経皮的に移植口腔癌組織に導入しその増殖に及ぼす影響を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
in virtoの実験系で時間を要したため、vivoの実験系が遅れたことが原因と考える。 当初予定していた実験計画に従って、in vivoに重点を置き臨床的に検討していこうと考えている。 具体的にはヌードマウスを用い、その背部皮下に口腔癌細胞を移植し増殖能の比較検討を行う。ヌードマウス背部皮下に移植した口腔 癌細胞を増殖させた後、In vitroの検討にて効果が認められたsiRNA(VEGFs、VEGFR1、VEGFR2)を遺伝子銃(Biorad 社製:現有)、またはエレ クトロポレーションシステムを用いて経皮的に移植口腔癌組織に導入しその増殖に及ぼす影響を検討する。
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