研究課題/領域番号 |
24593037
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
日野 聡史 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90359927)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 口腔癌 / 転移 / アポトーシス |
研究概要 |
ヒト舌癌組織から樹立された扁平上皮癌細胞株と、この細胞をマウスへ繰り返し同所性移植することによって転移能を獲得させた細胞株を使用し、口腔扁平上皮癌細胞の転移能の獲得とTRAILによるアポトーシスへの抵抗性の獲得に相関があることを明らかにした。 次に、転移能を持たない細胞と転移能を有する細胞を比較することでTRAIL抵抗性の解除方法を探る手法をとった。種々の癌細胞で蛋白量や活性が上昇し、浸潤や転移など癌の悪性形質に深く関わることが知られるSrcに注目した。口腔扁平上皮癌細胞においても、転移能を獲得した細胞株にSrcキナーゼの活性化亢進があることを明らかにした。口腔癌においても、Srcの発現および活性化がその悪性形質を支持している可能性が考えられるため、siRNAを用いてSrcの発現を抑制したところ、転移能を有する細胞株のTRAIL抵抗性を解除することに成功した。 臨床レベルでSrcの発現抑制とTRAILの併用効果を確認した報告は未だなされていない。Srcはユビキタスに発現がみられるものの、正常細胞ではリン酸化を受け不活型として存在している。したがって、TRAILのリコンビナント製剤および抗体製剤にSrcの発現を抑制するsiRNAを併用するアポトーシス誘導療法は、軽微な副作用で高い抗腫瘍効果が得られることが期待できる。口腔癌の原発巣のみならず転移をも克服可能な理想的な治療法として、臨床応用に向けた研究の進行が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔癌のアポトーシス抵抗性に関わる分子としてSrcを同定した。Srcの発現抑制下にアポトーシス誘導刺激であるTRAILを使用して、口腔癌の転移抑制効果を検討する。 本研究の目的は口腔癌転移の制御であり、現在までの研究によってその標的となりうる分子が同定されていることから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度にin vitroでTRAILによるアポトーシスへの抵抗性の解除効果を確認した方法で、マウスxenograftモデルでの転移抑制効果について検討する。 本研究では、同所性移植モデルを用いることで、より実際の臨床に即した転移状態を作り出すことが可能になる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上述の細胞株にGFP遺伝子を導入し、恒常的にGFP蛍光を発現する細胞株を樹立する。この細胞は、マウスの同所性移植モデルを使用すると頸部リンパ節に転移した際に経皮的にそ の存在が捕捉される。これらの細胞を、マウスの舌あるいは咬筋内へ移植する。移植部での増殖様相(原発巣形成に要する時間、増殖能、局所浸潤能)を比較検討する。また、頸部リンパ節および遠隔臓器への転移様相(部位、個数、転移に要する期間など)を比較検討する。 本研究の遂行に必要な試薬一般、細胞培養試薬・器具、プラスチック器具、動物実験、専門家との議論を経て研究の方向性の再検討を行うための学会出張に研究費を使用する。
|