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2012 年度 実施状況報告書

頭頚部癌における予後予測因子SIRT1の細胞内局在に依存した細胞生物的機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24593043
研究種目

基盤研究(C)

研究機関地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所)

研究代表者

菊地 慶司  地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (90372094)

研究分担者 野口 映  地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (10456395)
野口 誠  富山大学, その他の研究科, 教授 (50208328)
高野 康雄  地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (60142022)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード頭頸部がん / SIRT1
研究概要

本年度は頭頚部がんにおけるSIRT1の発現ががん/がん細胞の特性にどのように結びついているのか検討した。
1.頭頚部がんにおけるSIRT1の発現とがんの臨床病理学的特性および患者の生命予後との関係を検討した。その結果、SIRT1の発現が低い症例ではがんが未分化である割合が有意に高く、かつ患者の無再発期間の短縮・生命予後の短縮に有意に相関していることを見いだした。
2.上記の観察とSIRT1が扁平上皮細胞の分化に促進的に関与するとの報告を考え合わせ、(1)扁平上皮組織では未分化な細胞でSIRT1の発現が低く、分化にともなってSIRT1の発現が上昇するかあるいはSIRT1の発現にともなって細胞が分化する、また(2)SIRT1の発現が低いがん細胞はSIRT1の発現が低い未分化な細胞に由来するか、あるいは細胞ががん化してから脱分化をおこしやすく、これがなんらか治療抵抗性に関係しているのではないか、という仮説を立てた。
3.上記(1)に対する予備的な検討として、子宮外頚部扁平上皮組織でのSIRT1の発現を調べた。SIRT1 mRNAの発現は上皮幹細胞マーカーと考えられる神経成長因子受容体p75およびNotchリガンドのDLL1を発現している細胞群には認められたが、これら発現していない細胞群には認められなかった。このことは、当初の予想に反して扁平上皮組織においてはSIRT1は未分化な細胞に発現し、分化に伴って発現が低下するという可能性があることを示唆している。
4.上記(2)について、頭頚部がん由来の細胞株HSC2においてRNA干渉法によりSIRT1の発現を抑制し、上皮細胞の分化に関わる遺伝子の発現の変動を毛検討した。その結果、SIRT1の発現抑制によってがん抑制的に機能するとされるTAp63の発現が低下することを見いだした。このことはSIRT1の低発現ががん化に寄与しうることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

頭頸部がんにおいてSIRT1がどのようにがんの進展に関与しているのかはこれまで知られていなかったが、今回それを明らかにすることができた。また、SIRT1の細胞学的機能について、遺伝子発現の面からSIRT1がTAp63をひとつの標的として上皮細胞の分化・がん化に関与している可能性が示され、これは想定以上の知見が得られたものと考えている。
しかし一方で、字数の制約上研究実績の概要の項には記載しなかったが、SIRT1の細胞内局在を決定する作業は、蛍光免疫染色法においては既製の抗体の反応性が現在の反応条件では低いために明瞭な染色シグナルが得られない、また生化学的分画法においてはSIRT1がおそらく他の核蛋白質に比べ核から漏出しやすい性質を持つらしく微妙な分画操作の差で細胞質/核画分のいずれに回収されてくるか再現性の良い結果が得られない、ことによって困難が続いているのが現状である。
これらを総合し、今年度は今後どのように研究を進めていくべきかが明確になった点が重要であると考え、上記の評価とした。

今後の研究の推進方策

1.SIRT1によりTAp63遺伝子の転写がどのように調節されるのかを明らかにする。クロマチン免疫沈降法等により、TAp63遺伝子の発現調節領域にどのような転写因子群が結合しており、その構成がSIRT1の有無によって変動するのかどうかを検討する。
2.SIRT1の発現が細胞の分化形質など細胞の性質・挙動にどのような影響を及ぼしているのかを検討する。SIRT1がさまざまな蛋白質を脱アセチル化することを考えると、SIRT1はTAp63の発現を維持・亢進させてがんに抑制的に作用する以外にさまざまな細胞内プロセスに影響を及ぼしており、細胞の性質・挙動は最終的にはそれらの総和として決定されるものと考えられる。また培養細胞であっても細胞は均質ではない可能性(例えば幹細胞と幹細胞から分化した系列が存在している可能性)があり、細胞の分化の程度によってSIRT1の機能が異なっているという可能性も考慮しなければならないと思われるので、なんらかの膜蛋白(例えばがん幹細胞マーカーとされるCD44)の発現を指標として特定の細胞集団を分離しSIRT1の機能を検討していく。
3.SIRT1が上皮細胞の分化および扁平上皮がん細胞の分化/脱分化に関与しているとすると、血清の存在下で長らく継代されてきた既存の頭頸部がん細胞株ではSIRT1の機能を十分に解析できない可能性がある。この点もふまえ、頭頸部がんからNOGマウス経由でのがん細胞株の樹立、および直接に試験管内培養系(無血清)によるがん細胞株の樹立を行い、SIRT1の機能解析に供していく。

次年度の研究費の使用計画

1.SIRT1の発現とTAp63遺伝子の転写調節機構との関係を解明するためのクロマチン免疫沈降法等に必要な、SIRT1を含む転写因子に対する抗体、siRNA、合成DNA、PCR関連試薬を購入する。
2.SIRT1の細胞内局在を蛍光免疫染色により検出可能な抗体を既存の抗体を購入し検討する。必要に応じて独自に抗体を作製して検討する。
3.がん幹細胞のマーカーと目される膜蛋白質(CD44、神経成長因子受容体p75等)に対する抗体を購入し、陽性細胞/陰性細胞を分離してSIRT1の発現に差があるかどうかを検討する。
4.新たな頭頸部がん細胞株を樹立するためにNOGマウスを購入し、また試験管内培養のために培地、増殖因子等を購入する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] High SIRT1 expression and low DBC1 expression are associated with poor prognosis in colorectal cancer.2013

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi K, Noguchi A, Takahashi H, Zheng H, Kameda Y, Sekiguchi H, Akaike M, Miyagi Y, Takano Y.
    • 雑誌名

      J. Cancer Therapeutics Res.

      巻: 2 ページ: 1-8

    • DOI

      10.7243/2050-120X-2-1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] SIRT1 expression is associated with good prognosis for head and neck squamous cell carcinoma patients.2013

    • 著者名/発表者名
      Noguchi A, Li X, Kubota A, Kikuchi K, Kameda Y, Zheng H, Miyagi Y, Aoki I, Takano Y.
    • 雑誌名

      Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol.

      巻: 11 ページ: 385-392

    • DOI

      10.1016/j.oooo.2012.12.013.

    • 査読あり
  • [学会発表] SIRT1 high-expression and low expression f SIRT1 inhibitor DBC1 correlates poor prognosis of colon cancer patients.

    • 著者名/発表者名
      菊地慶司, 野口映, 高野康雄
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
  • [学会発表] SIRT1の高発現は胃癌における予後不良因子である.

    • 著者名/発表者名
      3) 野口映, 菊地慶司, 高野康雄
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
  • [学会発表] SIRT1核発現は頭頸部扁平上皮癌の進展・予後のバイオマーカーである.

    • 著者名/発表者名
      野口映, 高野康雄
    • 学会等名
      第101回日本病理学会総会
    • 発表場所
      東京

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公開日: 2014-07-24  

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