研究課題/領域番号 |
24593046
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大谷 法理 東北大学, 歯学研究科(研究院), 大学院非常勤講師 (60338879)
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研究分担者 |
正木 英二 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40221577)
城戸 幹太 東北大学, 大学病院, 助教 (40343032)
水田 健太郎 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (40455796)
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キーワード | 術後痛 / ドーパミン / BDNF / 下行性抑制性伝導路 / 鎮痛薬 |
研究概要 |
本研究において、手術後にみられる神経障害性疼痛を引き起こすBDNFがどこから放出されるのか、また、下行性抑制性伝導路の1つであるドーパミン作動性抗侵害神経のシグナルがBDNF等により修飾を受け神経障害性疼痛をもたらすのかを検討した。 ヤクシュらの方法により脊髄カテーテル挿入、1週後、ブレンナンらの方法によりラット後足切開を加え、術後痛モデルラットの作成を作成した。鎮痛効果を、自発痛、機械刺激、赤外線熱刺激試験にて経時的に評価し、また、免疫組織学的にBDNFの産生量, ミクログリア活性化を調べた。 足底切開により脊髄においてBDNF発現量が非切開側と比較して有意に増加した。この増加したBDNF産生量をミクログリア活性化抑制剤であるミノサイクリンは抑制しなかった。さらに、脊髄ミクログリア活性化は、切開側と非切開側とで同様であった。このことは、足底切開により術後早期には脊髄後角ミクログリアの活性化は生じず、したがって、足底切開により生じたBDNF産生の増加は1次求心性神経からによるものであることが強く示唆された。 D2レセプターの作動薬であるクインピロールは術後痛モデルにおいて、自発痛、機械刺激、赤外線熱刺激試験にて評価された抗侵害作用を示した。また、足底切開を加えない健常側でも痛みに対する閾値を上昇させた。D2遮断薬であるスルピリドには侵害刺激を増強させる作用が手術、健常側ともに認められた。免疫組織学評価では足底切開により生じたBDNF産生にはD2作動薬、遮断薬ともに影響を与えなかった。 以上より、手術等の神経損傷により1次求心神経から放出されたBDNFはドーパミン性抗侵害神経を修飾せず、また、ドーパミン性抗侵害神経の活性化は1次求心神経からのBDNF放出機構には何ら影響を与えていないことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
D2レセプター作動薬、拮抗薬の脊髄内投与後の行動評価は予定通りに進行している。また、関連薬剤であり、ミクログリア活性抑制剤であるミノサイクリンを用いた、術後痛モデルにおけるBNDF放出機構に対する研究は現在成果を論文としては票を行う準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、D2レセプター作動薬、遮断薬の術後痛に対する作用を検討するとともに(濃度依存性や術後痛以外での神経障害性疼痛モデルを用いて)、手術反対側での効果を検討する。また、D1レセプター作動薬、遮断薬投与後の行動評価を行う。さらに、1次求心性神経の活動電位に与える影響D1,2作動薬、遮断薬の効果を調べる。 25年度使用額は、BDNF 放出機構の研究を優先したためにしたために、当初計画していた集中的な免疫組織学的研究、ならびに一次神経のドーパミン抗侵害神経の影響を次年度に延期したことによって生じたものであり、延期した両研究に必要な経費として平成26年度請求額と合わせて使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度使用額は、BDNF 放出機構の研究を優先したために、当初計画していた集中的な免疫組織学的研究、ならびに一次神経のドーパミン抗侵害神経の影響を次年度に延期したことによって生じた. 延期した上記研究に必要な経費として平成26年度請求額と合わせて使用する予定である。
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