研究課題/領域番号 |
24593050
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西條 英人 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80372390)
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研究分担者 |
星 和人 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30344451)
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キーワード | 骨再建 / 幹細胞 / 骨膜 |
研究概要 |
本研究では、組織幹細胞が豊富に存在すると推測されている骨膜において、高接着性を指標として骨膜幹細胞を同定し、さらに低接着ストレスで幹細胞特性を維持しながら単離、増殖培養を実現し、骨膜幹細胞を用いた現実的な骨再生医療を確立することを目的として研究を実施している、平成24年度における研究成果により、分裂速度が異なる細胞集団が混在しており、分裂速度が速い細胞集団は、アグリゲート・コロニーを形成することが確認された。平成25年度は、これらの細胞集団の特性を明確にするために、細胞同定および増殖法を検討した。アグリゲート・コロニー構成細胞から増殖曲線による増殖評価と骨・軟骨・脂肪分化などの多分化能を評価し、選別前のコロニー構成細胞や単層培養による培養骨膜細胞の結果を比較して幹細胞特性の向上を確認した。分裂速度の速い細胞集団は、遅い集団と比較して有意に軟骨基質産生量が高く、多分化能を保持していることが明らかとなった。さらに骨欠損モデルを作製し、骨膜由来細胞を移植した。経過観察後、X線、マイクロCTを用いて骨再生を評価した。再生された骨膜が移植細胞由来であることが確認されたことにより、アグリゲート・コロニー構成細胞が骨膜幹細胞であることが推測された。次に、これらの細胞をより純化し、大量に作製するための培養法を検討した。骨膜幹細胞を培養する方法として低接着性培養皿を使用した。MPCポリマーをコートした培養皿でヒト骨膜幹細胞を培養し、培養効率の高いポリマー濃度の最適化を行い、骨膜幹細胞に適した培養法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画は、①骨膜幹細胞の同定、②低接着ストレスによる骨膜幹細胞の増殖培養法確立を目的に研究を実施した。①骨膜幹細胞の同定に関しては、分裂速度の異なる細胞集団を、FACSを用いて2分画に大別し、それぞれの細胞集団の細胞表面マーカーを検討した。併せて、マイクロアレイによる遺伝子の網羅的解析とプロテオーム解析により遺伝子レベル、蛋白レベルでのそれぞれの細胞集団に特異的なマーカーを検索した。②低接着ストレスによる骨膜幹細胞の増殖培養法の確立に関しては、それぞれの細胞集団を0, 1, 2, 5, 10%MPCコートディッシュに播種し、各細胞集団に適したMPCコートの濃度を検討した。実験計画に準じた研究結果が得られていることから、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から実施しているポリマーによる細胞培養法を確立する。次に、ビーグル(1歳齢、雄)の下顎骨欠損モデルを作製する。自家骨膜より特異マーカーで分取した骨膜幹細胞を確立した培養法で増殖させ、β-TCP顆粒と混和し、チタンメッシュトレイを用いて移植を行う。移植後、経時的にX線、超音波による評価を行い、骨膜幹細胞移植による骨再生に対する有用性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度の平成26年度は、単離、同定した骨膜幹細胞を用いて、動物実験を実施し、in vivoでの有用性を検証する。 ビーグル(1歳齢、雄)の下顎に長さ3 cmの骨区域欠損を作製する(n=9)。再生骨移植群(n=3)では、自家骨膜より特異マーカーで分取した骨膜幹細胞をMPCポリマー・コート培養皿で培養し、細胞数1x108細胞を確保する。培養骨膜幹細胞をβTCP顆粒と混和し、欠損部に合致する形態を付与したチタンメッシュトレイを用いて欠損部に移植する。コントロール群 (n=3)では、βTCP顆粒のみをメッシュトレイに充填し、欠損部に移植する。自家海綿骨 (PCBM)移植群では、腸骨から採取した海綿骨をチタンメッシュトレイに充填し、欠損部に移植する。移植後2ヶ月で移植組織を摘出し、X線撮影、μCT撮影、組織像などを用いて骨再生を評価する。また、骨膜におけるマーカー細胞の局在を免疫染色で評価する。
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