研究課題/領域番号 |
24593057
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石川 敏三 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90034991)
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研究分担者 |
石川 浩三 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20624795)
鈴木 秀典 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30393432)
仲西 修 九州歯科大学, 歯学部, 名誉教授 (50137345)
掛田 崇寛 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 准教授 (60403664)
山本 美佐 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70379957)
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90159129)
伊吹 京秀 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90232587)
徳田 信子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70227578)
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キーワード | 慢性疼痛 / 気分障害 / 痛覚ー情動系 / シグナル変調 / 神経栄養因子 / カテコール化合物 / 磁気刺激治療 |
研究概要 |
慢性疼痛や精神的抑うつ状態は極めて難治性で、ヒトの生活など社会的にも大きな影響を及ぼすことから、治療法確立は急務である。最近、共通して神経栄養因子(BDNF)不足の関与が示唆されている。申請者らが開発した携帯型慢性疼痛・うつ病治療器(AT)は、微弱なエネルギーでありながら、培養グリアの活性化とBDNF誘導作用があり、ラット慢性痛に有効性を見出した。またカテコール基を有する4-methylcatechol(4-MC)も同様な作用が期待され、BDNF誘導作用により根治治療の根拠を解明することを目指している。そこで、①ラット慢性痛(気分障害併発病モデルにおいて、症状を緩和するか、②その効果は神経栄養因子(BDNF)誘導作用を介するか解析する。 今までに、慢性疼痛に併発する気分障害の解析及び神経栄養因子型治療法について以下の解析が進んだ。1)前帯状回神経細胞群のBDNFおよび関連するシグナルの変調によりもたらされること。2)“うつ病”とは異なり,慢性疼痛に併発するうつ症状では,5-HTとBDNFの相互作用,特に共通したシグナル変調により起こること。3)BDNFの機能低下は,さまざまな神経変性疾患の情動系分子メカニズムとしての可能性を示した。 また、神経栄養因子型治療法では、Atおよび4-MCともに、これらの神経系の機能変調に対し、BDNFの作用は神経系障害において,細胞障害の修復のみならず,シナプスの正常化に向けて改善することが判明した。 特に、4-MCについては、論文発表(Cell Molecular Neurobiolog)や米国神経科学学会および国内疼痛学会で発表し、高い評価を受けた。このように、難治性神経疾患患者におけるうつ症状は近年、大きく注目されており、その中で本研究成果は先駆的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下のことがほぼ達成できたと考えている。 1)慢性疼痛の患者で遭遇する気分障害をラットで再現性の良いモデル作成ができた。2)慢性疼痛に併発する気分障害は、前帯状回神経細胞群のBDNFおよび関連するシグナルの変調、5-HTとBDNFの相互作用,特に共通したシグナル変調により起こること。3)このようなBDNFの作用は神経系障害において,細胞障害の修復のみならず,シナプスの正常化に向けて有意な基礎的知見と考えられ、臨床における治療法の理解に大きく貢献する成果と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今までの成果は、細胞障害の修復のみならず,シナプスの正常化に向けて有意な基礎的知見と考えられ、臨床における治療法の理解に大きく貢献する成果と考えられる。 今後は、さらにシグナルや遺伝子レベルを強化したい。 うつ症状は近年、大きく注目されており、その中で本研究成果は先駆的であり、発展が期待されている。また、すでに別途業績に示すように、海外雑誌や国際学会での発表をこなしてきた。さらにこれらの活動も促進したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度までの研究において、特に、培養系実験に関する経費が予定より削減できたことや、遺伝子関連試薬なども削減できたことで、繰越金177,620円の残となった。 これらについては、次年度に、さらに類似の解析も必要となったことで、有効利用したい。 遺伝子解析実験の追加:BDNF mRNAのマーカーとしての価値が判明したことからウエスタンブロットによる蛋白解析を、ほかのERK,CREBと合わせ、実施することから、それらの費用に使用する。
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