研究課題/領域番号 |
24593058
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
怡土 信一 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00315095)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | GABA誘導体 / 静脈麻酔薬 / 中枢神経系 / シナプス前神経終末 / 鎮痛 / 全身麻酔 / 静脈内鎮静法 |
研究実績の概要 |
本研究課題のテーマである「全身麻酔および静脈内鎮静法における麻酔深度、循環動態、術中術後鎮痛に及ぼすGABA誘導体の効果」について、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会において研究実施が認められた。同倫理審査委員会よりGABA誘導体は1剤ずつ試験を行うよう勧告されたため、まずプレガバリンに関する研究を行った。本研究では、静脈内鎮静法(IVS)を行い、IVS前に経口投与したプレガバリンが鎮静中の鎮痛・麻酔作用に及ぼす効果について検討した。研究協力者である加留部紀子大学院生と共に臨床試験を行った。 健康な成人ボランティア10人を対象に、同一被験者に同一条件下で3回のプロポフォールによるIVSを施行した。1回目はプレガバリンを内服せず(対照群)、2回目はプレガバリン100 mg(100 mg群)、3回目はプレガバリン200 mg(200 mg群)をIVS開始1時間前に内服させ、各群間で比較検討を行った。プレガバリン内服群では、各BIS値(200 mg群:BIS値80、70、60;100 mg群:BIS値70、60)でのプロポフォール血中濃度が対照群と比較して有意に低かった。一定のRamsay鎮静スコアおよびMackenzie鎮静スコアにおけるプロポフォール血中濃度も、プレガバリン内服群で対照群よりも有意に低かった。プロポフォールによる血管痛に対するVAS値は、200 mg群で有意に低かった。痛み刺激に対する反応は、各群間で有意差がなかった。脈拍数は200 mg群で有意に減少していたが、血圧および経皮的酸素飽和度は対照群とプレガバリン内服群とで有意差はなかった。覚醒遅延、眠気、かすみ目などの併発症発生頻度および程度は、200 mg群で有意に高かった。現在、ガバペンチンについての臨床試験を遂行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床試験実施計画において、GABA誘導体であるプレガバリンとガバペンチンについて同時に臨床試験を実施したい意向を九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会に提出した。しかし、GABA誘導体と静脈麻酔薬プロポフォールを併用した時の安全性が不明である、という理由で1剤ずつ研究を進めるよう勧告された。 そこで、まず、プレガバリンの臨床試験を行った。同薬剤の試験はすでに終了し、成果発表として国際学会での発表および論文投稿を行った。投稿論文は、現在修正を要求されたため、その作業を実施している。 ガバペンチンの臨床試験は、すでに倫理審査委員会において認められており、現在進めているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
・プレガバリンに関する研究成果の英文雑誌掲載を完了させる。 ・ガバペンチンの臨床試験を進め、平成27年度中に終了させる。学会発表と英文雑誌掲載による成果発表を行う。 ・シナプス前神経終末部における伝達物質放出におよぼす薬剤の影響についての基礎研究結果をまとめ、雑誌掲載により成果発表を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、2種の対象薬剤の臨床試験を同時に進めていく予定だったが、倫理審査において、まず1剤の試験を行い、その結果を基に研究計画を修正してもう1剤の試験を行うよう指導された。そのため、研究期間の大幅な延長が必要になった。1剤の試験は既に終了し、2剤目は平成26年12月に臨床試験倫理審査委員会で承認を得た。全ての試験が終了し成果報告が完了するのは平成27年度になる見込みである。
|
次年度使用額の使用計画 |
2剤目(ガバペンチン)の臨床試験を行うにあたって、ボランティア謝金、薬剤や消耗品などの購入費用とする。また、本研究に関わる学会報告および論文発表の費用として使用する。
|