研究課題/領域番号 |
24593061
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
阿部 伸一 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (40256300)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 筋シート / 上皮シート |
研究概要 |
頬粘膜癌などによって広範な粘膜摘出後に、自己細胞による口腔粘膜細胞シートの応用が試みられているが、直下の筋層の再構築までは困難なことから治癒後の咀嚼・嚥下機能障害という問題点が指摘されている。そこで、上皮、結合組織、筋肉の細胞シートをハイブリットさせた3層積層シートを開発し、生体におけるこれらの3層構造をin vitroで再現し、これらの構造維持に重要な細胞骨格、接着タンパクの局在を比較、検討した。上皮シート作製のため、日本家兎口腔粘膜から細胞を採取した。同時に酵素処理により分離した結合組織由来の細胞をゲル状のコラーゲンと混和し、インサート上に播種した。この結合組織ゲルをfeader細胞とし、上皮細胞と共培養を行った。筋シートは日本家兎の筋芽細胞を用いて作製した。両シートを積層し、通法に従い凍結切片を作製し、細胞骨格タンパク、接着タンパクの局在観察のため、免疫組織化学的染色を行った。上皮シートが結合組織ゲルを介して、筋肉シートと密接な状態であることがわかった。また、それぞれのシートに生体と同様な中間径フィラメントの発現が確認された。上皮基底層、結合組織にコラーゲンや接着関連タンパクも観察されたことから、良好な積層シートが作製可能となった。次年度以降、さらに詳細に積層シートの発現タンパクを同定し、生体の口腔粘膜との構造を比較検討したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に沿って積層細胞シートを作成した。その結果、筋芽細胞シート上に上皮細胞シートが緊密に接着していることが確認された。免疫組織化学的染色の結果から、上皮細胞シートでは抗ケラチン抗体に対し、表層から中間層で強い発現がみられることが明らかとなった。また、筋芽細胞シートではシート全体に初期には抗ビメンチン抗体に強く反応し、その後、抗デスミン抗体陽性領域も全体に拡がっていった。以上の結果から、上皮細胞―筋芽細胞積層シートの構造維持には中間径フィラメントが重要な役割を担う可能性が示唆された。以上初年度での研究成果はほぼ予定通りであり、次年度上皮細胞シートの基底層部分と筋芽細胞シートの接着部位の発現タンパク、及び中間径フィラメントとの関係などに関する問題点も抽出できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、実際にマウスの生体からそれぞれの細胞を採取し、細胞シート作製に用いたい。マウス口腔粘膜採取には、マウスを東京歯科大学動物実験指針に基づき深麻酔にて無痛屠殺後頬部より粘膜を5mm程度深部まで摘出する。その後、酵素処理により上皮と上皮下組織に分離する。ここで使用するデイスパーゼは、基底膜部分に作用し、間葉系組織から上皮をきれいに剥離可能である。次にトリプシン処理により、それぞれの細胞を培養する。培養液には増殖因子、10%FBSを含んだDMEM12(SHEM)を使用する。上皮細胞はフィブリンをコートしたインサート上に播種し、MMC処理済み3T3フィーダー細胞と2週間共培養を行う。さらに、Air-lift cultureを1週間行う。同条件で作製した細胞シートについて、表面構造が敷石状であること、HE染色像から層構造が形成されていることを必ず確認し、目的である口腔粘膜上皮細胞シートとする。 口腔粘膜上皮下組織から分離した細胞を直接インサート上に播種し48時間培養を行い、結合組織細胞シートを作製する。同様に骨格筋細胞シートはフィーダーやフィブリンを使用せず、インサート上に直接胎生期マウス咬筋より採取した筋芽細胞を播種後36時間培養し、骨格筋細胞シートを作製する。胎生期マウスは受精後筋芽細胞としての集積のみで、筋管構造に分化していない時期である胎生14日のものを使用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
作製した積層シートに対し、各種タンパクの発現を免疫組織化学的染色により明らかにする。さらにウエスタンブロット法で同タンパクの経時的な変化、ライトサイクラーを用いてmRNAの定量化を行う。連続切片作製、免疫染色、ウエスタンブロット、mRNAの定量化実験、データ解析を行う。積層細胞シートの作製、その後の移植などの実験手技を含む方法論が確立した段階で、移植するマウスをGFP(グリーン)マウス(C57BL/6-Tg, Jackson)(Kakinohara O. et al., Experimental Neurology, 2004)に変更し、移植した積層細胞シートがどのように生体に適合・治癒していくのかについて観察する。ここで組織切片上において、細胞シート由来の細胞および組織領域であるか、GFPマウスの生体由来のもの(グリーンに発色する)かについて詳細に検索する。以上の実験手技に関わる経費を使用予定とする。
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