研究課題
本研究は、口腔、咽頭粘膜実質再生を実現するために、口腔粘膜上皮、口腔粘膜上皮下組織、筋組織から抽出された細胞を用いてそれぞれの細胞シートを作製し、それらを積層したハイブリッド型細胞シートの創製を目的としている。昨年度積層シート作製には成功しているため、今年度は積層シートの構造維持に必須な細胞骨格である中間径フィラメント、接着タンパクの局在について検証を行った。粘膜上皮特有の細胞骨格タンパクであるケラチン4と13を、免疫組織化学的染色にて検索すると、ともに、上皮組織全体にまんべんなく観察された。実際のタンパク量の変化を確認するために、Western blot を行ったところ、βアクチンに対するケラチン13のタンパク量の継日的な変化は増加傾向にあったものの、有意な差は観察されなかった。筋特有の構造タンパクであるデスミンは、経日的に継続して観察することができ、重層化にともなって継日的に増加していた。ウェスタンブロット法により、デスミンの継日的なタンパク量の変化を観察したところ、βアクチンに対するデスミンの量は5日目、7日目において1日目に比べ有意に増加が認められた。免疫組織化学的染色において、基底膜接着タンパクであるコラーゲンタイプIVは上皮基底層、コラーゲンゲル層ならびに筋層でも発現が認められ、ラミニンは上皮基底層でのみ発現が認められた。ウェスタンブロット法にて、コラーゲンタイプIVの継日的なタンパク量の変化を検索したところ、βアクチンに対するコラーゲンタイプIVの量に、有意な差は見られなかった。以上のように作製した積層シートには、生体と類似した構造タンパクが発現していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
研究目的に沿って作製した積層シートに、生体と類似する構造タンパクが発現していることを確認できたため、おおむね順調に進展していると判断した。特に上皮シート内には、粘膜上皮特有の細胞骨格タンパクであるケラチン4と13が上皮組織全体にまんべんなく観察された。そして筋シートには、筋特有の構造タンパクであるデスミンは、経日的に継続して観察することができ、重層化にともなって継日的に増加していた。また細胞間接着タンパクとして、基底膜接着タンパクであるコラーゲンタイプIVは上皮基底層、コラーゲンゲル層ならびに筋層でも発現が認められ、ラミニンは上皮基底層でのみ発現が認められた。これらは我々が研究を始めた当初から目指している、生体にできる限り近い構造を持った積層シートの開発という目的を達成しつつあることを示唆している。
次年度は、これまで開発した細胞積層シートの特に筋シート部分の細胞生物学的特性を明らかにする。すなわち、その先に計画している動物実験へ向け、どのような筋特性を持ったシート部分が、移植後生体を馴染んでいくのかについて最終的な課題を克服する必要があるためと考えている。
学会発表(国内)における旅費による使用を計画していたが、他の予算での支出となり使用しなかったため。学会発表(国内)における旅費として使用予定である。
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Journal of Hard Tissue Biology
巻: 23
http://www.tdc.ac.jp/dept/anat/publish.html