研究実績の概要 |
舌痛症は難治性口腔内異常疼痛の中で最も発症率が高いことが知られているが、その発症機構に関しては全く研究がなされておらず、不明である。舌は味覚だけでなく痛覚や触覚などの体性感覚機能や咀嚼嚥下機能にも重要な役割を果たしていることから、舌痛症発症は即患者のQOLの破たんを招くと考えられる。本研究では2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid (TNBS) 舌投与により舌痛症モデルマウスを作製し、同モデルに生じる舌熱痛覚過敏に対するArtemin の役割について検討した。 C57/BL6雄性マウス(7w)の舌背にTNBS (10 mg/ml, 1h)を投与すると、投与後1日目より舌背に熱痛覚過敏が生じた。TNBS舌背投与後5日目、舌に組織学的変化は認められなかったが、舌背粘膜においてArtemin発現量が増加し、抗Artemin中和抗体およびTRPV1アンタゴニスト(SB366791)の投与により舌背の熱痛覚過敏が抑制された。また三叉神経節における舌投射Artemin 受容体(GFR alpha 3)陽性かつTRPV1陽性神経細胞数が増加した。さらにArtemin舌投与後5日目に舌背に熱痛覚過敏が生じ、SB366791の舌投与により舌背の熱痛覚過敏が抑制された。TNBS舌背投与後、三叉神経節における舌投射神経細胞のcapsaisinに対する興奮性が増強されたが、その増強は抗Artemin中和抗体の舌投与により抑制された。さらに、TNBS舌背投与後、satellite cellsの活性化が認められた。これら得られたデータをまとめて論文を作成し、海外英文誌に投稿中である。
|