研究課題/領域番号 |
24593065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
今村 佳樹 日本大学, 歯学部, 教授 (90176503)
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研究分担者 |
岡田 明子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10434078)
篠崎 貴弘 日本大学, 歯学部, 助教 (50339230)
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
小池 一喜 日本大学, 歯学部, 准教授 (70096808)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バーニングマウス症候群 / 内分泌 / コルチゾール / ノルアドレナリン / うつ / 免疫 / CD8 / CD4/CD8比 |
研究概要 |
バーニングマウス症候群(BMS)の臨床研究においては、47名のBMS患者と性別および年齢分布を同じくした47名の健康ボランティアを対象に、不安傾向、うつ傾向、血清ACTH、コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリン、CD4(+)細胞数、CD8(+)細胞数、CD4/CD8比、NK細胞活性についての検討を行った。ACTH,コルチゾールの測定には、ガンマカウンタによるラジオイムノアッセイ法を用いた。アドレナリンとノルアドレナリンの測定には、高速液体クロマトグラフィを用いた。リンパ球の測定には、レーザーフローサイトメトリ法を、CD4/CD8比を測定するには2色フローメトリ法を用いた。また、うつ傾向を調べるには、SDS質問票を、不安傾向を調べるには、MAS質問票を用いた。BMS群と対照群では内分泌機能に明らかな2群間の差は見られなかったが、両群の対象者を総じて検討すると、うつの程度とコルチゾール、ノルアドレナリン濃度の間にはいずれも正の相関関係を認めた。一方、これら2群間における免疫機能の差異をみると、BMS群において対照群に比べて、CD8(+)細胞数が有意に低値を示しており、これを受けてCD4/CD8比は有意に大きくなっていた。これらの免疫機能については、内分泌機能で診られたような、うつあるいは不安との関係は見られなかった。従来、BMSの病因として、うつや不安等の心理社会的ストレスの関与が説明されているが、我々の研究結果からは、うつの傾向とHPA軸を介したストレスホルモンの相関は見られたものの、そのこと自体がBMSの病態を説明しうるものではないことが示唆された。BMSの病態には、CD8(+)細胞の減少という、細胞免疫の抑制が背景にあり、いくつかの疼痛性疾患で示された免疫応答と類似した所見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BMS患者を用いた内分泌機能、免疫機能からの病態の検討に関しては、順調に研究が進み、すでに雑誌への発表も行った。この点に関しては予定通りの進行である。いっぽう、BMS患者を用いた脳機能解析については、現在進行中である。昨年撮像したデータについては解析を行っているところである。この研究に関しては、これまで行ってきた協力施設(日本大学医学部)の都合でこれまで使用していた施設と機器が使用できなくなったため、新たに研究計画を立てて、当学部と協力施設(日本大学医学部)の倫理委員会の承認を得る必要があったが、これもすでにクリアし、これから新たな環境でデータの採取に取り掛かるところである。BMSの動物モデルについては、鼓索神経傷害モデルにおいて、末梢組織と中枢において、免疫組織学的な変化が確認されている。ただ、BMSの病態を反映できるような行動学的所見(安静時痛を主症状とし、誘発痛等は示さないこと)を再現することが難しく、現在これをクリアすべく試行錯誤を繰り返しているところである。今後何らかの行動学的観察を持って病態生理を説明できるようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はMRIを用いたBMS患者の中枢機能の解析を中心に研究を進める方針である。MRI研究に当たっては、日本大学医学部放射線学系阿部修教授の協力の下、BMS患者に研究に参加いただき、BMSにおける中枢神経の活動について、対照との相違を検討する予定である。また、動物モデルについては安静時痛を評価する行動学的観察指標を今年度中に確立し、形態学的観察結果との整合性を求める予定である。BMS患者における免疫・内分泌機能の検討からは、さらにBMS患者の口腔痛を増悪または軽減させる介入を行って、その際の免疫・内分泌機能の検討を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究の中心は臨床研究においている。MRI画像の統計計算を行いうる高性能PCの購入が必要であるが、その他は当初の計画にない物品の購入は予定していない。経費の多くは研究協力者(被験者)への謝礼となることが考えられる。動物を用いた研究では、免疫組織学的観察に用いる試薬が比較的高価であるので、これらの購入に充てることが考えられる。次年度使用額として5163円があるが、これは消耗品や海外からの物品購入に際して円高等が影響して生じたものであり、次年度の研究において、試薬等に充てる予定としている。
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