研究課題/領域番号 |
24593066
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小宮山 一雄 日本大学, 歯学部, 教授 (00120452)
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研究分担者 |
松本 直行 日本大学, 歯学部, 助教 (20386080)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 3次元培養 / 癌浸潤 / lamin / plectin-1 / desmoplakin / HSP / keratin |
研究概要 |
口腔癌はこれまでの病理組織学的検討により,正常粘膜上皮が異形成をおこし,上皮内癌のステージを経て,浸潤癌へと進行することが分かっている。申請者らは各ステージにおける上皮細胞層のプロテオーム解析をおこない,浸潤癌へと進行する過程での発現タンパクを比較検討した。正常上皮から異形成をおこすと,Keratin13,Keartin17,Heat-shock-proteinなどが有意に変動することが明らかとなった。また,浸潤癌ではLamin A/C, desmoplakin,plectin-1などの発現が上昇していた。これらの分子は,腺癌では癌の浸潤や予後との相関がみられることが報告されている。しかし,扁平上皮癌である口腔癌においては,これらの分子の働きが明らかでないことから,浸潤癌診断のマーカーとしての有意性の検討をおこなった.申請者らは,口腔浸潤癌評価の方法に付いて,従来の免疫組織化学,分子生物学的手法に加え,ヒト子宮筋腫ディスク上に腫瘍細胞を播種して浸潤能を評価する3次元的浸潤モデルを開発して検討をおこなった.現在までに免疫組織化学により,上皮内癌への進展には上皮異形成の進行に伴い,上皮有棘層におけるKeratin13が消失,Keartin17の新たな出現がみられること,HSP27.HSP90の発現亢進がみられることを明らかにした。そこで,3次元浸潤モデルの開発を研究年次を前倒しして検討をおこなった。現在までに,HSC-3,HSC-3,Ca9および申請者の研究室で開発したCa9のserin proteinase inhibitorを発現抑制したHSC-1を用いて,各細胞の浸潤動態のサの検討をおこなっている。未処理の癌細胞(HSC-3,HSC-3,Ca9)は,筋腫ディスク内へ浸潤を示すことが明らかであったが,筋腫表層での重層化が口腔粘膜とは異なるという問題点も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは,口腔癌浸潤メカニズムを解析するために正常口腔粘膜,上皮内癌,浸潤癌のプロてオーム解析をおこない,Keratin13,Keartin17,Heat-shock-protein,Lamin A/C, desmoplakin,plectin-1変動を認めることを明らかにできた. 25年度の申請研究である口腔癌浸潤3次元モデル開発を前倒しして検討を行っている。現在までに,Myoma disk上に口腔癌HSC-3,HSC4,Ca9,NUSD-1を播種し,浸潤モデルを作製しているが,各癌細胞,Myomaの個体による発育速度,表層での扁平上皮のmimicとして重層化形成の欠如など,解決すべき問題点も明らかになってきた。しかし,口腔癌細胞の3次元モデルとして筋層深く浸潤する細胞を認め,本モデルが新しい評価法として有意性があることを示すことができた。申請者らが作製したCa9を元としたNUSD-1は,口腔癌細胞の3次元モデルを用いた検討で浸潤能が欠如していることを示した。 また,倫理承認の遅れ,および抗体の継続的入手の遅れがあり,免疫組織化学による評価は,約50%であったが次年度はこの遅れを取り戻せると考えている。 以上,申請時の研究計画はほぼ順調に進捗していると判断できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には,これまでの研究で得られた口腔癌進展,浸潤の指標として,細胞骨格分子,および細胞接着分子の成果について,国内外の研究会および学会において報告する予定である。また,口腔癌の口腔癌浸潤3次元モデル開発の成果について,同様に報告をおこなう予定である。 次に,口腔癌細胞浸潤の客観的な評価法の検討をおこなう,現在のmyoma desk内の深達度は組織標本でおこなっているが,disk内全域にどれくらいの浸潤を示したか評価することが出来ない。腫瘍細胞にtagをつけることで,量的評価の可能性を検討する。 また,口腔癌浸潤3次元モデル開発の過程で,明らかになった,各癌細胞,Myomaの個体による発育速度,表層での扁平上皮のmimicとして重層化形成の欠如などの問題点について,培養法の再検討,およびKeratin13,Keartin17,Heat-shock-protein,Lamin A/C, desmoplakin,plectin-1などの分子のうち,LaminA/C,desmoplakinの発現抑制をおこない口腔癌浸潤能の検討を口腔癌浸潤3次元モデルを用いておこなう。 さらに,申請者がCa9を元にして作製したNUSD-1は,浸潤能を欠如しておりdisk表層で重層化することから,両者のプロミクスによる発現解析で,網羅的に口腔癌浸潤関連分子を検討する。とくに,申請研究で対象としているKeratin13,Keartin17,Heat-shock-protein,Lamin A/C, desmoplakin,plectin-1の比較検討をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年には,研究遂行な為に以下の試薬および費用の支出を計上している。 1)Keratin13,Keartin17,Heat-shock-protein,Lamin A/C, desmoplakin,plectin-1の各抗体タンパク,培養用試薬および器具,株化癌細胞,myoma調達費用。 2)研究成果報告の為の旅費および投稿料を含む論文作製の為の費用。 3)本研究の海外の共同研究者(研究協力者)との研究打ち合わせのための招聘費用,または申請者の海外旅費。海外研究者と協議して,時期,費用を検討して,適切な方を選ぶ。 4)プロテオミクスなど,当研究室で設備していない機器による解析の為の費用。 尚,昨年度研究成果報告用として,謝金(英文校正料)使用予定であったが,申請研究で得られた新規培養法については投稿準備中であったため使用しなかった。また,旅費に残金が出たこと,抗体が海外注文で時間がかかることなどにより繰越金が生じた。このらの繰越金は,25年度に当初目的の費用として使用する予定です。
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