研究課題/領域番号 |
24593067
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
島津 徳人 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10297947)
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研究分担者 |
青葉 孝昭 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (30028807)
田谷 雄二 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30197587)
柳下 寿郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (50256989)
佐藤 かおり 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90287772)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯学 / 病理学 / 舌癌 / リンパ管新生 / リンパ管浸潤 / 転移 / 病理診断 / 3次元形態計測 |
研究概要 |
口腔癌の多くは口腔粘膜上皮に由来する扁平上皮癌であり、早期に所属リンパ節に転移しやすく予後も悪い。本研究では、舌側縁部に好発する舌扁平上皮癌(舌癌)の浸潤様式とリンパ管内侵襲の成立機序を明らかにする目的で、癌微小環境(癌胞巣、血管・リンパ管走行など)を立体情報化し、原発病巣における癌細胞の免疫表現型や浸潤様式、リンパ管内侵襲様式を網羅的に解析する。初年度の今回、高精細な組織立体構築に向けて、回転式ミクロトームで連続薄切標本(4μm厚、100枚)を作製し、複数の特異抗体(サイトケラチンCK、Ki-67、CD31、D2-40、S100A4、αSMA)と発色剤(DAB 茶色; Vector SG 青色; AEC 赤色)の組合せによる多重免疫標識を実施した。異なる免疫表現型を示す腫瘍実質、血管内皮、リンパ管内皮、間葉系細胞を分画するために、単一抗体による標識画像ごとにバーチャルスライドを用いて高解像度のデジタル情報(VS画像)として多段階で記録した。VS画像の位置合わせとRGB色調による構成要素の分画にはImageJおよびRATOC TRI-SRF2を使用した。各症例の癌病変立体構造を分析した結果、癌細胞のリンパ管侵襲様式としては、浸潤癌細胞集団がリンパ管壁を突き破るように管腔内に侵襲している場合が多く認められた。拡張したリンパ管において管腔を閉塞する細胞集団の多くはCK陰性/S100A4陽性を示したが、リンパ節転移を認めた症例の舌原発病巣部では、CK陽性の癌細胞によるリンパ管閉塞も検出された。今回確立した病理形態観察法により、癌微小環境における血管走行とリンパ管走行を考慮したうえで脈管新生や癌細胞によるリンパ管侵襲を精度高く診断することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連続薄切標本での多重免疫標識情報に基づいて組織空間の立体再構築・形態計測を実施するうえでは、組織要素の分画に際して微小な癌胞巣や狭い癌間質空間に展開する微細な血管・リンパ管網を高い精度で再現できることが課題であった。今回用いたバーチャルスライド(浜松ホトニクスNanoZoomer)の画質は10,000×10,000ピクセル(0.46μm/ピクセル)であり、組織内に浸潤・分散している癌細胞の核質・細胞質成分の分画・計測を細胞1個単位の精度で行うことができた。解析領域についても、立体構築された癌組織領域(組織アレイ試料3 mm径、4μm厚×100枚分の組織空間)に含まれる全構成細胞に相当する2-4×10^6個/mm立方の細胞核を分画することができており、構成細胞単位での増殖活性の判別、腫瘍間質に分散する単核細胞と脈管壁に組み込まれた内皮細胞との分画、内皮細胞・腫瘍細胞が互いに隣接する箇所の可視化・定量化が可能となった。今回確立した画像処理プロトコルでは、ヘマトキシリン核染色と細胞形質の免疫標識(サイトケラチン、Ki-67、CD抗原、細胞骨格など)との標識シグナル情報を統合することにより、癌微小環境を構成する組織・細胞要素の大部分を分画した上で、癌浸潤形態と脈管走行を同時に観察することが実現できており、今後、癌浸潤転移機序や癌微小環境の成立に関わる多様な分子間相互作用を探るうえでの解析パラメータ検討に有用な情報も得られた。この立体構築で使用した1枚のバーチャル画像は240メガバイト程度に達したが、本年度経費での大容量ストレージ媒体(8テラバイトNASシステム;TeraStation)の購入により、バックアップ作業にも支障を来たすことなく症例解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた舌癌病変の3次元構造特性から、癌胞巣内部の狭い間質では腫瘍増殖圧によってリンパ管腔は圧平されており、癌胞巣周辺では新生リンパ管密度が高く、管腔も拡張しやすく、管腔内閉塞も起こりやすいことが想定された。この仮説を検証する目的で、予後経過を含む臨床情報が揃っている舌癌30症例を対象として、癌微小環境における実質・間質構造の特質(癌胞巣の連結性と増殖活性、intratumor領域とperitumor領域での脈管密度と空間分布、癌細胞と脈管壁との接触頻度と管腔内閉塞の発生頻度)と癌症例の予後情報(所属リンパ節への一次転移・後発転移、遠隔臓器への転移の有無)とを照合する。舌癌症例では、同じ症例においても実質・間質境界に沿って部位的に浸潤様式の多様性をともなっている。そのため、癌病変全域の浸潤様式の多様性を包括的に評価する目的で、各舌癌症例の最大割断面に相当する連続組織標本に多重免疫標識(CD31→D2-40→サイトケラチン→ビメンチンあるいはFSP1)を施し、癌胞巣の形状、脈管密度、間質構成細胞の空間分布について3次元形態計測を遂行する。この広領域の立体観察では、癌胞巣と脈管壁との接触箇所の密集領域(ホットスポット)を自動検出できるが、薄切標本の均一性を担保する難しさが制約となってくる。そのため、特定されたホットスポットを組織アレイ法で採取することにより、連続薄切標本の均一性を高める工夫をする。本研究の到達目標のひとつとして、舌癌症例での解析例を蓄積するなかで、日常の臨床病理診断にも使える利便性や汎用性を実現することを掲げている。この目標に向けて浸潤様式の分類とそれらの構造特性に適用する画像解析プロトコルの確立を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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