研究課題/領域番号 |
24593070
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山方 秀一 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70292034)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノコンポジット / ナノマテリアル / 層状シリケート / 歯科矯正 / 複合材料 / 機械的特性 / 審美 |
研究概要 |
複合材料では他の破壊機序に先行してマトリックスポリマーの破壊が生じてはならないため、適切な可橈性を有させる必要がある。当該年度ではPMMA(アクリペットMD、三菱レイヨン社、東京)をマトリックス材として用い、ポリマーの可橈性を損なわずにナノコンポジット化する工程に関し、残された課題であった1.ナノコンポジット化に適した有機化モンモリロナイト(有機MMT)の極性の模索、ならびに2. PMMA/シラン処理有機MMTナノコンポジットを加温圧縮成形する際に生じる含有気泡の低減に対する解決を図った。 具体的には、まず上記課題1.に対して数種の有機化方法を実施した結果、あらかじめ60℃に加熱した脱イオン水に1wt%のモンモリロナイトを加えて1時間撹拌したうえで、重量イオン交換率が100%となるよう計量した四級アルキルアンモニウム(Dimethyl Dioctadecyl Ammonium)を投入した後にさらに1時間撹拌し、得られた溶液を遠心分離して沈殿物を採取・乾燥する方法が現時点においては有効であると結論した。次に、上記課題2.に対し、既に確立を済ませているsolution intercalation法によりPMMA/シラン処理有機MMTナノコンポジットを作製し、同プリプレグを粉砕して微細粉末とし、各種温度・時間条件下で残留溶剤の揮発を行ったうえで加温圧縮成形に充てたが、いずれの条件においても成形試料への気泡混入を顕著に低下させるには至らなかった。 上記実施内容のうち後者の結果に鑑み、当該助成により溶融混練法に必要なイリプスブレード型一軸ミキサを購入できたことで、成形試料の気泡含有の解決ばかりではなく直接分散法と溶融混練法とによる有機MMTの分散性、有機MMTへのPMMAの層間挿入あるいは有機MMTの層剥離の差異を検討できるようになり、今後の大きな進捗が見込める状況を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規性の高い材料開発の領域では、特にその作製方法に通法と呼べるものはなく、作製方法のプロトコールの確立に多大な時間と労力が必要となる。当該研究課題においても同様で、種々の作製プロセス毎に手法の確立に期間を要したが、各実験から今後の研究展開に有益な結果が得られていること、ならびに溶融混練法による試料作製が可能となったことは大きな収穫であった。引き続き有機MMTに対するヘキシルトリメトキシシラン(HTMS)およびオクタデシルトリメトキシシラン(OTMS)を用いるシランカップリング処理がナノコンポジット化に与える効果に関する実験・評価を行うことで、平成25年度以降も当初予定のとおりの達成度を見込めると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基にして実験内容の修正ならびに追加実験を行い、PMMA/シラン処理有機MMTナノコンポジットに関する物性および機械的特性に関する基礎データを得る。次いで、PMMA/シラン処理有機MMTナノコンポジット作製プロセスへの超音波照射の導入がMMTの分散性に与える効果に関する実験へと移行する。 抗菌性付与に関する実験として、ベチュリンとメタクリル酸メチルまたはメタクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体を作製し、機械的特性におよぼす影響ならびに細菌培養試験の結果を詳らかにする予定である。ベチュリン-メタクリル酸エステルの共重合の方法としては、小スケールの封入管および100gスケールのフラスコを用いた過酸化物またはアゾ化合物によるラジカル共重合を予定している。重合体の分析にはNMRおよび高温GPによる測定に加え、二重結合の簡易評価法としてFT-IRによる測定を行う。測定結果に基づき仕込み組成、共重合体組成、収率のデータを求め、Mayo-Lewis微分式の積算により共重合性反応比を推算し、共重合性におよぼす仕込み組成依存性や重合温度依存性等の影響を評価する。なお、二重結合を有するメタクリル酸メチルのほうがベチュリンよりも重合の反応性が大きいと推測される点に関しては、仕込み比率や仕込み方法の工夫以外に、メタクリル酸メチルモノマーの一部を無水マレイン酸やアクリルニトリルで置き換えて親電子性を強めることでイソプロぺニル基との共重合性を変化させ、検討する予定である。さらに、抗菌性については、JIS Z 2801「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」による評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
<当該助成金が生じた状況> 次年度使用額(B-A)は、平成24年12月に発注した機械の工作期間が2か月超を要したために納品が3月初旬へとずれ込み、結果として3月内に支払いを行えなかったことによって生じたものである。 <翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画> 上記により生じた助成金については、当該物品の支払いに充てられる。なお、翌年度分として請求した助成金については、当該研究課題の開始当初予定のとおりに支出を予定している。
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