研究課題/領域番号 |
24593070
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山方 秀一 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70292034)
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キーワード | ナノコンポジット / ナノマテリアル / 層状シリケート / 歯科矯正 / 複合材料 / 機械的特性 / 審美 |
研究概要 |
研究実施計画に従って、まずはこれまでの成果に基づいた実験内容の修正ならびに追加実験を行い、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とシラン処理を施した有機化モンモリロナイト(OMMT)との複合材料(PMMA/シラン処理OMMTナノコンポジット)の3点曲げ試験を実施した。これらを通し、加温圧縮成形用治具と樹脂との間にエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)薄膜を介在させることでほぼ完全に気泡を含有しない試験片の作製が可能となり、試験結果のばらつきを小さくできるという重要な成果が得られた。 次に、PMMA/シラン処理OMMTナノコンポジットの機械的特性の向上に向け、直接分散法のひとつであるsolution intercalation法の工程に超音波照射を導入し、シラン処理OMMTの層間距離の増加または層剥離の促進を図った。具体的には、溶解液へ30, 60, 120, 180分間の4条件で周波数28 kHzの超音波を照射してプリプレグを作製し、ETFE薄膜を用いた加温圧縮成形で板状試験片とした。TEM観察からPMMA内でのシラン処理OMMTの分散性には照射時間依存のない良化を確認できたが、XRD測定では層間距離の増加または層剥離が起こったことを示す明確なデータは得られなかった。今後は周波数40 kHzの超音波照射による改善を目指す予定である。 また、イリプスブレード型一軸ミキサを用いた溶融混練法によるナノコンポジット作製へ進む前に、母材ポリマーを結晶性ポリマーであるポリL乳酸(PLLA)に替えた場合のsolution intercalation法の有効性を検討した。この結果、PLLAの結晶化温度はシラン処理OMMT添加の有無および添加量(2, 4 wt%)によらず110℃付近で一定であり、曲げ弾性率はシラン処理OMMTの添加無添加によって約1.3倍に向上できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規性の高い材料開発の領域では、特にその作製方法に通法と呼べるものはなく、作製方法のプロトコールの確立に多大な時間と労力が必要となる。当該研究年度においても、前年度と同様に種々の作製プロセス毎に手法の確立に期間を要したが、直接分散法を応用して作製した試料を用いた各実験において今後の展開に有益な結果が得られていること、ならびに溶融混練法による試料作製が可能となっていることで、直接分散法による試料との比較・検討を行うことが可能となったことは重要な進展であったといえる。 引き続き有機化モンモリロナイト(OMMT)に対するヘキシルトリメトキシシラン(HTMS)およびオクタデシルトリメトキシシラン(OTMS)を用いるシランカップリング処理がナノコンポジット化およびその各種特性に与える効果に関する実験・評価を実施することに加え、ナノコンポジットへのベチュリンの導入による抗菌活性の付与を推進することで、平成26年度も当初予定のとおりの達成度が見込めると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に得られた結果を基にして実験内容の修正ならびに追加実験を行い、ポリメチルメタクリレート(PMMA)/シラン処理有機化MMT(OMMT)ナノコンポジットに関する物性および機械的特性に関する基礎データを得る。その中でも特に、シラン処理OMMTの分散性に与える40 kHzの超音波照射の効果に関する実験・評価は平成26年度の研究実施計画の冒頭に位置する重点項目となる。 抗菌性付与に関する実験としては、当初予定のとおりベチュリンとメタクリル酸メチルまたはメタクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体を作製し、機械的特性におよぼす影響ならびに細菌培養試験を実施する予定である。ベチュリン-メタクリル酸エステルの共重合の方法としては、小スケールの封入管および100gスケールのフラスコを用いた過酸化物またはアゾ化合物によるラジカル共重合を予定している。重合体の分析にはNMRおよび高温GPによる測定に加え、二重結合の簡易評価法としてFT-IRによる測定を行う。測定結果に基づき仕込み組成、共重合体組成、収率のデータを求め、Mayo-Lewis微分式の積算により共重合性反応比を推算し、共重合性におよぼす仕込み組成依存性や重合温度依存性等の影響を評価する。なお、二重結合を有するメタクリル酸メチルのほうがベチュリンよりも重合の反応性が大きいと推測される点に関しては、仕込み比率や仕込み方法の工夫以外に、メタクリル酸メチルモノマーの一部を無水マレイン酸やアクリルニトリルで置き換えて親電子性を強めることでイソプロぺニル基との共重合性を変化させ、検討する予定である。さらに、抗菌性については、JIS Z 2801「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」による評価を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A)は、平成26年3月までに発注・納品が済んだ消耗品に関する支出であるが、支払いが平成26年4月に行われるために生じたものである。 上記理由にしたがい、次年度使用額(B-A)は、確実に当該物品の支払いに充てられる。 なお、翌年度分として請求した助成金については、当該研究課題の開始当初予定のとおりに支出を予定している。
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