研究実績の概要 |
当該研究課題は矯正歯科用金属ワイヤーに替わるポリマー系複合材料ワイヤーの開発を目的として実施された。最終年度(平成26年度)には、結晶性ポリマーであり生分解性ポリマーであるポリL乳酸(PLLA)の基礎的特性評価および生体安全性評価に注力し、良好な成果を得るに至った。具体的な成果は以下のとおりである。なお、前年度までの成果を踏まえ、複合材料の強化材料には4級アルキルアンモニウムで有機化した後にアルキルトリアルコキシシランで表面改質したモンモリロナイト(s-OMMT)を用いた。 (1)複合材料化:solution intercalation法と溶融混錬法の2つの手法を実施した。前者に関しては得られた熱可塑プリプレグの粉砕までの一連の工程を確立でき、後者に関してはPLLAの離型性の悪さを解決する段階に至ることができた。 (2)熱的特性:示差走査熱量測定(DSC)の結果に基づいてPLLAの結晶化温度およびガラス転移点、融点、結晶化度はs-OMMTの添加率(0, 2, 4 wt%)の影響をほとんど受けないこと、さらに試験片の加温圧縮成形時のアニーリング処理は110℃、30分間が適切であることを明らかにした。 (3)機械的特性:エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)薄膜を介在させる加温圧縮成形手法によってほぼ完全に気泡を含有しない試験片の作製が可能となり、わずか4 wt%のs-OMMT添加で約10%もの曲げ弾性率向上を可能とした。 (4)生体安全性評価:ヒト骨肉腫細胞(MG-63)およびマウス骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)に対するs-OMMT(0.1-30 ppm)の曝露試験を行い、細胞生存率はMG-63で90%以上、MC3T3-E1で80%以上と高く、かつ明らかな細胞死を示すSEM像が確認されなかったことから、s-OMMTの安全性は高いと結論できた。
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