研究課題/領域番号 |
24593071
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松野 美乃 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 専門研究員 (80374544)
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研究分担者 |
菊入 崇 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10322819)
吉村 善隆 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30230816)
出山 義昭 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (80271667)
飯田 順一郎 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90151232)
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キーワード | 歯学 / 口唇裂・口蓋裂 / 幹細胞 |
研究概要 |
本研究では、造血幹細胞と併用し間葉系幹細胞を用いた唇顎裂・唇顎口蓋裂患者における顎裂部欠損部の骨組織再生療法を確立することを目的としている。将来、幹細胞による骨組織再生術を実現するには、移植した幹細胞を効率良く骨芽細胞への分化させる必要がある。本研究は移植した幹細胞の分化転換機構として「間葉系幹細胞の骨組織への分化過程において、間葉系幹細胞は造血幹細胞と相互作用し、それぞれの分化誘導を制御している。」という仮説を基に骨組織再生療法に関する基盤的研究を行う。 マウス骨髄より採取・培養した骨髄由来間葉系幹細胞と、骨髄細胞より分離した造血幹細胞を用いて、マウス背部皮下およびマウス頭部に骨欠損を生じた部分に細胞と多孔性アパタイトを組み合わせて移植した。移植8週後に形成された骨組織の解析を行った。多孔性アパタイトのみを移植した実験群および造血幹細胞のみを移植した実験群では、骨組織の再生はみられなかった。一方、間葉系幹細胞のみを移植した実験群および間葉系幹細胞と造血幹細胞を同時に移植した実験群では、多孔性アパタイトの周囲に新生骨の形成が確認された。特に間葉系幹細胞と造血幹細胞を同時に移植した実験群では、間葉系幹細胞のみを移植した実験群と比較して、有意に多くの骨組織が形成されていた。また、形成された骨組織は、骨のリモデリングが活発に行なわれと思われる網状構造を呈していた。造血幹細胞特異的に発現している転写因子であるGATA2に対する免疫染色をおこなった所、間葉系幹細胞の近傍にGATA2陽性の細胞が隣在していることが判明した。 以上の事から、移植された造血幹細胞は、間葉系幹細胞と直接接触することで何らかの相互作用介して、間葉系幹細胞の骨形成を増殖している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って研究はおおむね進んでいると思われる。 前年度までの研究結果を基に今年度の計画を継続し、研究の成果をまとめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も前年度と同様にマウス骨髄より採取・培養した骨髄由来間葉系幹細胞と骨髄細胞より分離した造血幹細胞を用いて研究を行なう。 間葉系幹細胞と造血幹細胞間の相互作用について、造血幹細胞が間葉系幹細胞のニッチ細胞として作用していることを分子生物学的に明らかにする予定である。また、移植した幹細胞が骨組織以外の奇形種を生じているか否か、幹細胞移植に伴う安全性について検討する。 さらにGFPマウス骨髄から間葉系幹細胞を採取・培養し、骨欠損部位に移植して形成された骨組織の解析をおこなう。これにより、移植体において新生した骨組織がどちらの移植した幹細胞に由来しているのか、間葉系幹細胞と造血系幹細胞との相互作用についても検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、消耗品費においてキャンペーンがあり、当初予定額より支出が抑えられ、経費の節約ができたためである。 今年度の未使用額は、前年度に納品された消耗品費および旅費の4月支払および今年度の実験動物の購入に使用する予定である。
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