研究課題
破骨細胞分化の必須誘導因子として骨芽細胞が発現するRANKLが発見され、破骨細胞の分化・活性化機構の解明が進歩した。また、近年、同じように炎症性のサイトカインであるTNF-αでも破骨細胞が誘導されることがわかった。このことから一般的に骨のリモデリングを含む生理的骨吸収は、RANKLが主に働いており、リウマチや感染などによる病的骨吸収は、TNF-αが主に働いているものだと考え られている。それらのことよりTNF-αでの破骨細胞形成のメカニズムの解明することは、重要な課題となっている。本研究では、破骨細胞形成に関与している細胞である骨細胞のin vivoでのTNF-αによる破骨細胞形成への関与を検討しそのメカニ ズムを解明することを目的として研究を開始した。まず、骨細胞の単離から行った。マウス頭蓋骨より、軟組織を取り除いた後、コラゲナーゼ等で酵素処理を行い、骨表面の細胞を取り除いた骨を調整し、その後キレート剤を用いて脱灰することにより純度の高い骨細胞の単離を試みた。採取した細胞を顕微鏡下で観察したところ樹状様の突起物がある骨細胞様の細胞が単離されたことが確認された。単離した骨細胞をα-MEM 200μl培養液中でTNF-αを作用させ、細胞を回収し、Total RNAを精製し、破骨細胞分化関連因子であるRANKL、OPGおよびM-CSF等のmRNAの発現をreal-time PCR法を用いて解析した。しかしながら、骨細胞が培養途中で完全に死滅あるいはほぼ死滅していくために充分なRNAが採取できない状況にある。現在、骨細胞の培養条件を検討している。
3: やや遅れている
マウス頭蓋骨より、骨細胞の単離は、うまく行くようになったが、その後の骨細胞の培養において、細胞死が起こり、培養条件の設定に時間がかかっている。培養時間の設定、TNF-aの作用濃度などの調整を行い、細胞死を防ぐ必要がある。
単離した骨細胞をα-MEM 200μl培養液中で経時的にTNF-α(100μg/ml)を作用させ、細胞を回収し、Total RNAを精製し、破骨細胞分化関連因子であるRANKL、OPGおよびM-CSF等のmRNAの発現をreal-time PCR法を用いて定量的に解析する。現在、培養中に骨細胞が細胞死を起こすため、細胞死がおこらないような培養条件を設定する。その骨細胞にTNF-αを作用させ、経時的に細胞を回収、細胞溶解し、ウェスタンブロットにて、NF-kBの経路、MAPKの経路およびAktの経路などのシグナル伝達因子の発現とリン酸化を観察する。また、単離した骨細胞と96穴ウェルプレートにて骨細胞104cell/wellと骨髄細胞105cell/wellをVitamin D3(10-6M)およびTNF-α(100ng/ml)存在下でα-MEM 200μl培養液中で5-10日共培養を行い経時的に破骨細胞形成を観察する。TRAP染色にて確認を行う。評価は細胞像、TRAP陽性細胞の数をカウントすることで行う。方法は、我々が通常行っている骨芽細胞の共培養の方法に準じて行う。骨芽細胞も同様な作用があることから生後1日齢マウスより、頭蓋骨を取り出し、平滑筋等の周囲の組織を取り去り細かく断片化し、組織培養用コラーゲン入りの培養液中で培養し、5-7日後に回収し、初期培養の骨芽細胞として単離してくる。骨細胞と同様にマウスより採取した骨髄細胞と共培養でTNF-αを作用させ、破骨細胞形成能を比較する。同様に破骨細胞形成因子の発現をreal-time PCR法等の生化学的評価法で、骨細胞と比較する。
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